ショッピングモール、駅地下にもドンキ出現…“驚安の殿堂”が意外な場所に登場し始めた納得の理由
■ 駅前一等地に出店した「特化型店舗の狙い」 ――日本国内の事業に目を移すと、ここ数年で「一点突破型・特化型」の店舗を急速に増やしています。東京駅の地下街をはじめ、駅前一等地やショッピングモールなどこれまでとは違う場所への出店も目立ちますが、この背景にはどのような狙いがあるのでしょうか。 酒井 ドンキは全国に店舗を展開していますが、郊外のロードサイドに出店しているイメージが強いのではないでしょうか。実際に北から南までの商圏を分析すると、中心部には空白地帯があります。そうしたエリアに出店すれば「従来のロードサイド店舗とは違う発見ができ、広告塔としても機能する」という考えから、都心や駅前一等地に小型店を出しています。 そもそもドンキは膨大な商品数を取り扱っていますから、一つのテーマに特化した小型店を作ることは難しくありません。ギラギラしたイメージの強いドンキの出店を敬遠しがちなショッピングモールでも、Z世代に人気の新業態「キラキラドンキ」は受け入れられています。 新しい業態を開発した結果、都心で新しい客層の心を捉えることができれば、MEGAドンキのような他店舗への導線になるかもしれません。都心や駅前一等地への出店を強化することで、アイコン的な存在として機能させることが同社の狙いです。 ――若い世代をターゲットにするだけでなく、商品別にさまざまな切り口で店舗を作り、新しい売れ筋を見つけるテストマーケティングを実践している、と捉えてもよいのでしょうか。 酒井 そうした側面は大きいと思います。特にショッピングモールに出店している特化型店舗は、新規顧客開拓とテストマーケティングを兼ねていることが多いようです。 最近印象的だったのが、旧ダイエー跡地に開業した「MEGAドン・キホーテ成増店」です。自動車で行く「ロードサイド」に対して、MEGAドン・キホーテ成増店は「レールサイド」とうたっています。この店舗は地下鉄の駅からのアクセスも良好ですから、駅前一等地でありながら「居抜き」をすることで広い面積の確保に成功しました。 小型店舗だけでなく、居抜きによる大型店や、ショッピングモールへの特化型店舗の出店など、さまざまな方法で国内中心部にある空白地帯を埋めようとしています。 ――同社の国内事業はまだ成長の余地があるのでしょうか。 酒井 国内市場は飽和状態という見方もできますが、小売総販売額の中でドンキのシェアは今のところ1.5%ほどですから、今後も出店を続けていくでしょう。 競合店に負けない品ぞろえや価格で対抗しつつ、空白地には積極的に出店し、採算が取れなければ撤退・リニューアルをしながら試行錯誤を続けています。そうした中から商機を見いだし、儲かる店舗を高速で立ち上げることで、競合店の客を奪うことが狙いです。消耗戦になることは必至ですが、ドンキはまだまだ売り上げを伸ばせると見ているようです。
三上 佳大