クリントン氏とトランプ氏が激突 今秋の大統領選で勝つのは?
「女性初」の大物政治家か、破竹の「テレビスター」か。米大統領選の予備選がカリフォルニア、ニュージャージーなど6州で行われ、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官は7日夜(日本時間8日午前)、候補者指名を確実にして地元ニューヨークで勝利宣言をしました。これからは今秋の本選挙へ向けた戦いが始まります。大統領選の行方はどうなるのか。これまでの予備選段階の総括と合わせて、アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に寄稿してもらいました。 【写真】“トランプ革命”の始まりか 大統領選が持つ歴史的意義
過去の民主党勝利州でみるとクリントン氏優位
11月の米大統領選に向けた共和・民主両党の候補者指名争いが事実上終了した。次期大統領にはヒラリー・クリントン氏(民主党)かドナルド・トランプ氏(共和党)のいずれかが就任する。 当然、世間の関心はどちらが勝つであろうが、選挙のファンダメンタルズ(基本環境)という点では民主党に分があると言えよう。
1990年以降、過去6回行われた大統領選で、6回ともすべて民主党が勝利した州は18。コロンビア特別区を加えると選挙人数は242人に及ぶ。当選に必要な過半数は270人なので、民主党はあと28人積み上げれば良いことになる。フロリダ州(29人)1つだけも十分であるし、オハイオ州(18人)とニューメキシコ州(5人)とネバダ州(6人)という組み合わせでも構わない。これら4州は2009年と12年のいずれも民主党が制している。かたや過去6回とも共和党が勝利した州は13州で、選挙人数は102人に過ぎない。過去6回中4回以上勝利した州まで広げると選挙人数は219人まで増えるものの、フロリダ州とオハイオ州を加えても過半数にはまだ4人足りない。 加えて、今回、ゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事が出馬する保守系の第三勢力・リバタリアン党の動向 も注目される。前回2012年の大統領選での得票率は約1%に留まったが、5月中旬に行われたFOXニュースの調査では約10%と急増している。共和党では党内一致を優先しトランプ氏を支持する動きも活発になっているが、反トランプ票がリバタリアン党に流れる可能性もある。リバタリアン党自体の勝ち目はないが、仮に得票率が3%であっても激戦州では共和党にとっての致命傷となりかねない。 さらには、白人比率が低下の一途をたどる人口動態 の観点でも民主党に分がある。 12年の大統領選の敗因を分析した共和党全国委員会の報告書は「マイノリティに歩み寄らなければ、今後の選挙で我々は敗北する」と警鐘を鳴らしていたが、今回、その教訓が生かされているとは言い難い。共和党指名候補争いの候補者たちの多くは、同党支持者に占める割合が高い白人保守派へのアピールを優先し、移民への締め付けを強めるような政策に偏りがちだった。 例えば、米国の総人口の約17%を占めるヒスパニック系の場合、12年の大統領選で共和党のミット・ロムニー候補に投票したのは27%。計算上、共和党は少なくとも40%以上を必要としている。04年に再選されたジョージ・ブッシュ前大統領は44%を獲得しているので決して不可能な数字ではない。しかし、予備選中、白人票を掘り起こすべく、ヒスパニック系を侮辱する言動を繰り返してきたトランプ氏にとっては高いハードルであることは間違いない。5月中旬に行われた5つの世論調査では、ヒスパニック系からの支持率は18~32%とばらつきがあるが、平均23%と低迷している。