「国家公務員試験トップ」よりも「予備校模試1位」の方が尊敬される…元経産相官僚が目撃した霞が関の謎文化
■SAPIX1位から5位が理三で再会 【西岡】ちなみに、いまは氏名が見られる模試の順位表はなくなっているんです。かつては1番から100番ぐらいまで名前が出る模試がありましたが。 【宇佐美】なんと、なくなったんですか! 時代の流れに合わせてということですか。 【西岡】はい、個人情報漏洩の観点からなくなったんですよ。でも僕の頃にはまだありましたし、名前が出てたひとは「伝説」とまではいかないまでも、やはり一目置かれていました。 受験から半年ぐらい経った頃の大学一年生のクラスの中で、誰かが模試の順位表を持ち出してきて「あ、あいつの名前あるぞ!」みたいなことをやりはじめる。世の中、誰しも「数字」とか「順位」が大好きなんだなと内心すこし呆れました。 小学6年生ぐらいの時のSAPIX模試で名前が出てたやつがそのまま東大入っている、なんていうのもよく聞く話です。 【じゅそうけん】SAPIX模試の1位から5位の方々が理科三類(東大の最難関)で「再会」したという話も聞いたことがあります。名前だけはお互い長年知り合っているのに、本当に出会うのは大学だというのが面白い。 ■「とりあえず理科三類」の大問題 【宇佐美】ただ、優秀な人が揃いも揃って理科三類に入るということが、その人たちの人生にとってよいことなのかどうかはわかりません。達成感がもの凄いからか、入学後にスポイルされてしまう人も一定数いる。そして理科三類に行かなかった人のほうが、案外大成したりもする。 【西岡】そこは大問題です。「理科三類」にはとてつもないブランド力がある。ですが、たとえば「海外の大学に行く」といった他の選択肢を見えにくくする側面もある。その人にとって一番よい選択肢は他にあるかもしれないにもかかわらずです。 【宇佐美】同期を思い浮かべても、そういう印象はあります。小学校の時から優秀で、絶対理三に行くだろうと思っていた人がいるのですが、意外なことに慶應医学部に入りました。そして今『ネイチャー』に論文を掲載している。そういう方の人生を見る一方で、理三でスポイルされた人たちも沢山見てきました。合格で燃え尽きるのを見るのはつらいことです。 【じゅそうけん】灘高校などには「とりあえず理科三類」みたいな流れさえもがあるそうですね。しかしせっかく優秀な若い方々であればこそ、視野を広く保っていただくのが大事だと感じさせられます。