今や貴重な純内燃エンジン、AMG謹製のV8ツインターボは680馬力! 新型アストン・マーティンDB12に試乗!!
世界遺産の英国スポーツカー!
もともと年初には試乗が可能という予定が、伸びに伸びていたDB12。首を長くして待っていると、なんとクーペだけでなく、遅れて投入されたオープンのヴォランテと、2台一緒のテスト・ドライブをすることが叶った。エンジン編集部のウエダがリポートする。 【写真18枚】新しい2台のアストン・マーティンに試乗 DB12クーペとヴォランテのなんとアグレッシブで優雅なことか! 詳細写真はコチラ ◆V8ツインターボは680馬力 初対面となる薄暗い駐車場で、こちらに向かって並ぶ2台はとにかくアグレッシブだった。新しい灯火類と巨大になった凸型グリル、下部インテーク・ダクトの造形は、限定車のONE-77みたいにも見える。 でも車体側面やリアの仕立ては、先代のDB11と大きく変わらない。それにグリル内の桟が横方向のみとシンプルなおかげか、おちょぼ口気味のDB11ほどではないが、アストン・マーティンらしくアンダーステートメント性を備えたエレガントさは、保たれているように感じる。 この顔つきを除けば、インストゥルメント・パネルの刷新と最新世代技術の投入がDB12のトピックだ。 ふわりと少し斜めに跳ね上がるドアを開けて座ってみれば、近代アストンが採用してきた、柔らかな曲線の太いコンソールが車内中央を貫く室内は、直線基調のモダンなものへ生まれ変わっていた。けれどステアリング・ホイールは変わらず太めで真円に近く、フットレストもしっかりあって、ドライビング・ポジションがぴたりと出るのはDB11と同じだ。2座のスポーツカーたる弟分のヴァンテージや、フラッグシップのヴァンキッシュと異なり、小さいとはいえ後席があって、4座となるのもこれまで通りである。 パワートレインの配置もDB11のV8搭載車と共通。前輪車軸より後方にAMG製M177型4リッターV8ツイン・ターボを置き、後輪軸上にZF製8段ATを配置するトランスアクスルFRレイアウトも踏襲する。ただしV8ユニットそのものはカムシャフト、圧縮比、ターボチャージャーなどを変更。最高出力は680PSとDB11V8比で+170psと大幅に引き上げられた。 ◆本流はクーペにあり モード切替も担うタッチの心地いいロータリー・スイッチの中央を押して始動する。ヴォン! とかなり勇ましさがある野太い音質だが、低音域のいかにもV8らしいドロドロした部分は見事に抑えられている。ここも変わらずのアストン流だ。 房総まで高速道路を中心に、幌を開け放ったヴォランテとクーペにかわるがわる乗ってまず感じたのは、操作系のフィーリングにきれいに統一感があること。DB11の特に初期モデルで感じたスロットルの明らかな軽さや、やけに重々しいステアリングは、見事に調律されている。 足さばきもいい。ヴォランテもクーペも車体剛性は引き上げられたとアナウンスされているが、比べると明らかに後者の方が好印象だった。21インチの超大径タイヤでも、速度域を問わずしっかりと路面をトレースするのは、改良された電子制御式ダンパーやスタビライザーが、やや緩さのあるヴォランテより、がっちりしたクーペのボディのほうにマッチしているからだろう。 とはいえ見るからに優雅なヴォランテは、高速上から田舎道まで空調も風のあしらい方が巧みで、その隙のなさにもほとほと感心した。 ロータリー・スイッチをスポーツの側へ回しモードを変えれば、そら恐ろしいほどの瞬発力を味わうこともできる。AMG各車ほどド派手じゃないが、全域に力感を漲らせた、さらに野太い音でも吠える。でも基本のGTモードなら、クルージング状態からでもこのV8はツキがよく、意のままに豊かなトルクを絞り出し、ほんとうに滑らかに、耳障りになる音もなく加速態勢に転ずる。クーペなら速度をさらに引き上げていっても、路面にぐっと張り付いているような安定感にも満ちている。DB12はコンセプトとしてスーパーツアラーという言葉を掲げているが、それはやはりクーペにこそ、よりふさわしいものだろう。 これまでアストン・マーティンはどこか荒々しい感じが潜み、ちょっとトゥ・マッチな印象が常にあった。そのワイルドさも味わいの一つとも思っていたが、DB12は洗練の度合いが大きい。特にクーペは全方位において正しい進化を遂げており、いちだんと魅力を増したと思う。 文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=神村 聖 ■アストン・マーティンDB12ヴォランテ 駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動 全長×全幅×全高 4725×1980×1295mm ホイールベース 2805mm 車両重量(前軸重量:後軸重量) 1940(930:1010)kg エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCツイン・ターボ ボア×ストローク 83×92mm 排気量 3982cc 最高出力 680ps/6000rpm 最大トルク 800Nm/2750-6000rpm トランスミッション 8段AT サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル サスペンション(後) マルチリンク/コイル ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク タイヤ(前/後) 275/35ZR21/325/30ZR21 車両本体価格 3290万円 ■DB12クーペ 駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動 全長×全幅×全高 4725×1980×1295mm ホイールベース 2805mm 車両重量(前軸重量:後軸重量) 1900(910:990)kg エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCツイン・ターボ ボア×ストローク 83×92mm 排気量 3982cc 最高出力 680ps/6000rpm 最大トルク 800Nm/2750-6000rpm トランスミッション 8段AT サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル サスペンション(後) マルチリンク/コイル ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク タイヤ(前/後) 275/35ZR21/325/30ZR21 車両本体価格 3090万円 (ENGINE2024年11月号)
ENGINE編集部
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