低ボラティリティーの背景にオプション売りETF-コラノビッチ氏
(ブルームバーグ): JPモルガン・チェースのチーフ市場ストラテジスト、マルコ・コラノビッチ氏は、金融政策についての不透明に照らして米株式相場の変動は際立って小さいと指摘し、その背景にリターンを高めるために個別銘柄や指数のオプションを売る上場投資信託(ETF)の人気があるのではないかとの見方を示した。
しかし、CBOEグローバル・マーケッツでデリバティブ(金融派生商品)マーケット・インテリジェンスを担当するマンディ・シュ氏は、これらのETFがコールオプションを大量に売っていることを考えると、コールオプションの相対的な価格ははるかに低くなるはずだと言う。そうでないのは、これらのETFの影響が限定的であることを示唆しているという。ボラティリティーが落ち着いているのは、経済的な背景が穏やかであるためだとシュ氏は論じる。
一方、JPモルガンののコラノビッチ氏は、オプションの値動きに注目するのは見当違いだと言う。これらのETFが売ったコールの多くは、10月以降のS&P500種株価指数の大幅上昇によって無価値になったため、スキューと呼ばれるコスト計算から除外されているからだという。
さらに、コールオプションの価格が相対的に高いのは、投資家が人工知能(AI)期待による息をのむような株価上昇に追いつこうと、強気のオプションを買い求めているからだとし、「市場が急速に上昇すれば、コールオプションの価格も上昇する」と説明した。
これは確かにテクニカルな話だ。しかしこの議論は、2018年のいわゆるボルマゲドンの後、ETFを使った新しいショートボラティリティー取引が市場全体に与える真の影響に対する懸念が高まっていることを浮き彫りにしている。グローバルX・ETFsがまとめたデータによると、このようなオプション売りETFの資産は2年間でほぼ4倍となり、過去最高の640億ドル(約9兆6400億円)に達した。
VIXとして知られるCBOEボラティリティー指数は99営業日連続で歴史的平均を下回り、市場には18年以降で最も長く平穏な状態が続いている。ウォール街では長引く平穏の背後にある要因についての議論が活発だ。