次なる貞子、伽椰子となるか?新たなるJホラーのアイコンが誕生した『ミンナのウタ』の怖すぎる魅力
例年以上の酷暑となっている今年の夏。蒸し蒸しとしたイヤ~な暑さが続くこのシーズンに観たくなるのが、肝まで冷えるジャパニーズホラーだ。毎年多くの新作が公開されているが、昨年の『ミンナのウタ』は予告編が一部劇場で上映中止となるなど「怖すぎる」と話題になった1作。そのDNAを継ぐ『あのコはだぁれ?』(公開中)がいよいよ公開されたいま、『ミンナのウタ』のなにが怖かったのか?その魅力をネタバレ全開で振り返っていきたい。 【写真を見る】GENERATIONSの出演も話題になった『ミンナのウタ』の“怖ポイント”をおさらい! ■GENERATIONSが次々と、、、清水崇監督による王道ホラー 「呪怨」シリーズや近年の“恐怖の村”シリーズで知られる清水崇が監督・共同脚本を手掛け、GENERATIONS from EXILE TRIBEを主役に迎えた本作。GENERATIONS全員が本人役で出演するという現実とフィクションが地続きとなったモキュメンタリー的な設定のもと、メンバーが“呪いのメロディー”による恐怖の連鎖に見舞われるという内容だ。 ライブを直前に控えるある日、ラジオ番組のパーソナリティを務める小森隼は、ラジオ局の倉庫で「ミンナのウタ」というラベルが貼られた謎のカセットテープを発見。その後の収録で「カセット…テープ…届き…ま…した…?」という謎の声を耳にすると、数日後、忽然と姿を消してしまう。 ライブが迫るなか、マネージャーの凛(早見あかり)は事態を解決するため、探偵の権田(マキタスポーツ)に捜査を依頼。メンバーへの聞き込みを行うと、小森だけでなくメンバーにも異変が起きていることが発覚し、ある女子中学生、高谷さな(穂紫朋子)の存在が浮かび上がってくる…。 ■Jホラーのイヤ~な空気感からのショックシーンのコンボが怖すぎ… GENERATIONS主演のアイドル映画だと高を括っていた人を恐怖のどん底へ突き落とし、ホラー映画として評価された本作。その要因の一つがしっかりとJホラー的な怖さを追及している点だろう。 キーアイテムとして登場するカセットテープのノイズの乗ったサウンドが醸しだす不気味かつアナログな質感をはじめ、キャラクターたちの奇妙な言動。禍々しい家で起こる奇怪な出来事に、その家の前にポツンとたたずむ少年“俊雄”の存在といった「呪怨」を彷彿とさせる要素など、真綿で首を絞めるかのようなジワーッとした恐怖が観客を追い詰めていく。 重要な舞台となる高谷家の一幕では、なにやら不穏な雰囲気を放つさなの部屋に対し、階段下から声をかけるさなの母親が壊れたように同じ言動を繰り返し、その後突如、白目を向きながらカメラに迫って来るというトラウマシーンも登場し、SNSでは最恐と話題に。 さらにホテルの廊下で関口メンディーに向かって走り寄ってきた俊雄が、飛びつく瞬間におぞましい顔をしたさなに変わっている、マリオ・バーヴァ監督の『ザ・ショック』(77)を彷彿とさせるシーンも。不気味なJホラー的雰囲気からのショック描写という良質なジャンプスケアなど、気合いの入ったホラー描写は圧巻だ。 ■怖さが倍増…徐々に真実を明かしていく巧みな語り口 また、小森失踪の謎を解いていくミステリー的なエッセンスもあり、探偵の権田はカセットを逆再生にしてみたりと試行錯誤していく。聞き込みを行うなか、メンバーから語られる様々な視点の証言により、なんともないと思っていたスタジオでの練習で、ある異変が起こっていたり…と徐々に真実へと迫っていく展開も巧み。 過去に起きたとある女子中学生の怪死事件という新たな闇に行き着くにつれて恐怖も倍増。肌を掻く音などのさりげない環境音の数々が呪いのメロディーを紡ぎだし、「ミンナのウタ」というタイトルに帰結していく様は鳥肌ものだ。 ■純粋な邪悪…新世代のホラーアイコン、さなの存在感 そして本作を語るうえで忘れてはいけないのが、恐怖の元凶となる高谷さなというキャラクター。卒業アルバムの写真も一人だけ解像度が少し荒かったりと些細な点から恐怖が演出されているさなは、30年以上前に亡くなっている怨霊だ。 この手の怨霊のキャラクターといえば、つらい出来事など過去への“恨み”を持ち、いささか同情する点があるもの。本作でも物語が進むにつれて、さなのつらい過去が描かれていく…のかと思いきや、そんなことは一切なし。もともと動物を虐待したりと残酷でサイコパス気質のあるさなは、生き物の最期の音を集めており、その音で呪いのメロディーを作りだしていく。 「自分の歌で、みんなを私の世界に惹き込む」という純粋な欲求を満たすため、次々とGENERATIONSを自分の世界に惹き込んでいくさな。制服姿に黒髪おかっぱヘアという日本人のDNAに刷り込まれた恐怖を感じさせるルックも絶妙だ。そんな彼女がマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」さながらに体を倒しながら階段を降りてくる、人間離れした動きはとにかく不気味だった。 ■少女”さな”による恐怖が再び描かれる『あのコはだぁれ?』 Jホラーや清水監督らしさと同時にフレッシュな描写や設定も随所に盛り込むことで、ケタ違いの恐怖を生みだした『ミンナのウタ』。そんな本作と同じ世界線で語られる新たな物語が『あのコはだぁれ?』だ。 学校の夏休みを舞台にした本作は、男女5人が補習授業を受ける教室で、いないはずの生徒が巻き起こす怪奇を描く学園ホラー。臨時教師として補習クラスを担当することになった君島ほのか(渋谷凪咲)の目の前で、ある女子生徒が突如屋上から飛び降り、死んでしまう。いないはずの生徒の謎に気がついたほのかと補習を受ける生徒たちは、やがて“あのコ”にまつわる衝撃の事実を知ることに。 本作でも“さな”という名の少女が登場するようだが、はたして関係は…?アッと驚く結末は、ぜひ劇場で確かめてほしい。 文/サンクレイオ翼