「ニナ リッチ」の最年少デザイナー 現在28歳のハリス・リードは“ドラマチックな日常着”に挑む
デザイナーのハリス・リード(Harris Reed)は2023年3月、メゾン史上最年少の27歳で「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のクリエイティブ・ディレクターに就任した。初コレクションの披露から4シーズン目に突入しようとしている今、鳴物入りでメゾンに迎えられた新星は、何を考えて、何を目指すのか。 【画像】「ニナ リッチ」の最年少デザイナー 現在28歳のハリス・リードは“ドラマチックな日常着”に挑む
WWD:これまで3シーズンを披露してきたが、心境の変化は?
ハリス・リード「ニナ リッチ」クリエイティブ・ディレクター(以下、リード):就任したての頃は、短期間であらゆることをこなさなくてはならないというプレッシャーに押しつぶされそうになった。92年もの歴史があるブランドだからこそ、密な関係性の取引先がいくつもあるから。でも新たに編成したチームや、メゾンに元々携わっているチームとも良い関係性を築けていることもあり、今はとても落ち着いて自分の役割に向き合えていると思う。
WWD:印象深いシーズンは。
リード:直近の2024-25年秋冬コレクションだ。どのデザイナーからも同じことを言われたが、1シーズン目と2シーズン目は、新クリエイティブ・ディレクターがどんな人なのかを知らせる期間。ただ、その後から人々は「このブランドをどう導くのか」を期待するようになる。会社のCEO(最高経営責任者)も「ニナ リッチ」のデザインチームも、信じられないくらい私を受け入れて、自由にデザインさせてくれている。だからこそ、3シーズン目はブランドのムードを定義づけるアイテムを発表しなければという気持ちがあった。結果、着やすさやシルエットのバリエーションをさらに追求した。自分のクリエイティビティーに正直にありたいが、チームの皆をがっかりさせるようなことはしたくない。かなりストレスを感じたシーズンだった。
WWD:今や、自身のブランド「ハリス リード」と「ニナ リッチ」を両立する必要がある。
リード:以前は、「どうやって2ブランドを差別化する?」などと悩んだ時期もあったが、今は良いバランスが取れている。というのも、「ハリス リード」はロンドンを、「ニナ リッチ」はパリを拠点にする全く異なるブランドであるからこそ、互いに良い影響を与え合える。私は、ブランドによって脳みその違う部分を使い分けている感覚だ。「ハリス リード」はグラミー賞のレッドカーペットに登場するような派手なクリエイション。母校のセント・マーチン美術大学で学んだアプローチを取るから、自分でカッティングをして型紙を切って……と、そこには私の“リアル”がある。一方「ニナ リッチ」では、メゾンの歴史が育んだ高いレベルのクラフツマンシップをもとに、ニナ・リッチ自身や彼女のライフスタイルを体現し、豪華なワードローブを組み立てる。おかげでテーラリングやドレスメーキングなどについて、本当に多くのことを学んだ。洋服の構造がよくわかるようになった。