「ニナ リッチ」の最年少デザイナー 現在28歳のハリス・リードは“ドラマチックな日常着”に挑む
WWD:クリエイションのインスピレーションはどこにある?
リード:街を歩く女性たちだ。ファンタジーの中に生きるのと同じくらい、現実の“キャラクター”を見て、彼女たちが何を着ているのかをチェックするのが大好き。そこから、実際に着られるものを私流に解釈して作りたい。私は家族を含めて、強く生きる女性をいつも見てきたから、そこから着想を得るのは自然なこと。ニナ・リッチが成功したのは、手頃な値段で着られる既製服を手掛け、世の女性にファンタジーやおしゃれの楽しさを届けたから。彼女はとても物静かで、周りをよく観察し、女性が本当に何を着たいのかを考え続けた人だったようだ。私も彼女のストイックさを学びながら、自分の個性をミックスしてひねりを加え、現代版の「ニナ リッチ」を作ろうとしている。
WWD:あなたはとても明るくてハッピーに溢れた人だ。物静かだったというニナのクリエイションも取り入れる上で、どうバランスをとるのか。
リード:私にとってファッションは、楽しくて幸せで自己表現ができるもの。どれだけニナのアーカイブをリサーチしたとしても、“楽しさ”を盛り込まずにはいられない。例えばエレガントなボウタイブラウスを作る場合でも、金のボタンや、艶のあるサテンで遊び心を効かせたくなる。でも、私のそばには「ニナ リッチ」で長年働くスタイリストやデザインチームがいるから、いつも「これはニナらしいか?」を確認してもらえる。時には大きなドレスや派手なアイテムを作るが、一歩引いて、そこにブランドのDNAが入っているかを意識する。ただ、私とニナの性格は真逆だったであろう一方で、女性のリアルに注目する点は共通している。24年のミューズは誰で、どんな服が理想で、100年後の「ニナ リッチ」はどのように変化するかを常に考える。
WWD:華やかなショーピースをコマーシャルピースに落とし込む上で意識していることは。
リード:ドラマチックな表現と、日常的な着やすさの両立だ。デビューショーは、これまでの「ニナ リッチ」に自分なりのスパイスを加えるため、大きなハットや明るいカラーパレットなどを用いた。グリーンのレースジャケットとパンツは、ミニドレスに作り直して販売した。ただやはり、華やかさと着やすさのバランスはとても難しい。たくさんの人にブランドの洋服を着てほしいから、華やかさと、着やすさや手頃さを両立したアイテムを作る必要があるし、セレブリティーなどのVIP顧客も抱えているから、イベントで映えるようなアイテムも作らなければ。「ニナ リッチ」は仕立ての技術が非常に高いからこそカクテルドレスが人気。これからはウィメンズスーツをヒーロープロダクトにしたい。女性用のテーラードアイテムを改めて洗練させ、遊び心を効かせる。次のコレクションでは、見る人を驚かせるような新たな仕掛けを披露する予定だ。