「ジョブズは自分の子どもにiPadを使わせなかった」ことが意味する「極めて危険な現実」
ふつうに生きていたら転落するーー! あまりに残酷な「無理ゲー社会」を生き延びるための「たった一つの生存戦略」とは? 【写真】「ジョブズは自分の子どもにiPadを使わせなかった」SNSが危険な理由 作家の橘玲氏が、ますます難易度の上がっていく人生を攻略するために「残酷な世界をハックする=裏道を行く方法」をわかりやすく解説します。 ※本記事は橘玲『裏道を行け』(講談社現代新書、2021年)から抜粋・編集したものです。
SNSに「ハマる」理由
2021年10月、フェイスブックの元幹部が大量の内部資料をメディアに提供したうえで、米上院小委員会の公聴会で、「インスタグラムを利用するティーンエイジ女子の3人に1人が自分の体形が劣っていると感じている」などの社内調査を、自社の利益を優先するために隠していたと証言した。 スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』(新潮新書)は、SNSの危険性を説いて日本でもベストセラーになった。この本でハンセンは、フェイスブックのようなSNSは脳の報酬系をハックするようにつくられていて、その過剰な利用が不眠やうつの原因になり、子どもの健全な成長を阻害すると警鐘を鳴らしている。 徹底的に社会的な動物として進化してきたヒトには、食べることとセックスする(愛される)ことと並んで、もうひとつ決定的に重要な欲望の対象がある。それが「評判」だ。 よい評判は仲間内での地位を高め、安全の確保や性愛のパートナーの獲得につながる。逆に悪い評判がたつと共同体から排斥され、旧石器時代にはこれは即座に死を意味しただろう。 このようにしてヒトは、よい評判を得ると幸福感が増し、悪い評判によって傷つく(殴られたり蹴られたりしたときと同じ脳の部位が活性化する)ようになった。 わたしたちはもともと、自分の評判(他者からどう見られているか)にきわめて敏感なように「設計」されている。フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどは、評判をリアルタイムで可視化するというイノベーションによって脳の報酬系にきわめて強い刺激を与えている。 この効果は、とりわけ思春期の若者たちに顕著に現われるだろう。