「ジョブズは自分の子どもにiPadを使わせなかった」ことが意味する「極めて危険な現実」
行動依存をもたらす「6つの要素」
心理学者のアダム・オルターは「依存テクノロジー」を論じるにあたって、ハンセンと同じく、スティーブ・ジョブズが自分の子どもにiPadを使わせなかったというエピソードから始めている。 ジョブズだけではなく、『WIRED』元編集長のクリス・アンダーソンやツイッターの創業者エヴェン・ウィリアムズなどIT業界の大物たちも、子どもにデジタルデバイスを買い与えなかったり、その使用に厳格な時間規制をしていたという。 オルターによれば、行動依存には6つの要素がある。 (1)目標:ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標があること (2)フィードバック:抵抗しづらく、また予測できないランダムな頻度で、報われる感覚(正のフィードバック)があること (3)進歩の実感:段階的に進歩・向上していく感覚があること (4)難易度のエスカレート:徐々に難易度を増していくタスクがあること (5)クリフハンガー:解消したいが解消されていない緊張感があること (6)社会的相互作用:強い社会的な結びつきがあること これは〈フロー〉の条件と同じで、SNSやオンラインゲームは6つの要素のほとんどすべてを備えている。そのためわたしたちは、スマートフォンから手を放すことができなくなってしまったのだ。 さらに連載記事<「トランプ再選」に落胆する「リベラル」がまったく理解していない、世界中で生きづらさを抱える人が急増した「驚きの原因」>では、人生の難易度が格段に上がった「無理ゲー社会」の実態をさらに解説しています。ぜひご覧ください。
橘 玲(作家)