リオ五輪出場を決めた女王・吉田が考える4連覇戦略とは?
ベテランになり経験が蓄積されると思慮深くなるが、屈託なく明るいまま気持ちを切り替えるという吉田の美点に陰りが出る可能性もある。ロンドン五輪では、いままで味わったことがない恐怖も知った。試合をする前に負けることを考えたことなどなかったのに、初めて「負けるかもしれない」と想像した。その体験から知ったのは「五輪の魔物は心にある」ということ。それほど恐ろしい思いを体験しても世界で勝ち続けたい。 「五輪4連覇をした日本人選手はいないし、女子選手だと世界でも誰もいない。誰もやったことがないことをしたい気持ちがあるから、五輪4連覇は絶対に成し遂げたい」 後輩との試合を喜び、試合を厳選する吉田は、いつかレスリングを辞めるときが来るのを予感しているのだろうか。かつて、どんな形で辞めるのだろうかと尋ねたとき「自分と相談しながら」との言葉を足しながら、こう語っている。 「負けて終わりたくないんですよね。勝って終わりたいとずっと思っています。(ロンドン五輪金の小原)日登美先輩みたいに、最後に勝って、気持ちいい形で終わりたい。その場合、最終目標を決めて、できる限りやりたいと考えたら、最後はリオ五輪になるのかなあ。それまで、楽しみながらやりたいですね。日本の若い選手たちとライバルになって、競い合いながら最終目標を目指すことになるのかな」 いつも「目の前の、ひとつひとつの試合を大事に勝っていく」ことに集中している吉田沙保里が、あらかじめ最後を決めておくことは、たぶんないだろう。それでも、過去3回の五輪とはちょっと違うやり方で、リオ五輪を最高の舞台にする準備を始めているのは間違いなさそうだ。 (文責・横森綾/フリーライター)