リオ五輪出場を決めた女王・吉田が考える4連覇戦略とは?
菅原との試合は、いろいろな偶然が積み重なった末の幸運でもあった。というのも吉田が本来、主戦場としているのは53kg級のため一階級上の菅原と争うことはない。しかし、今回は吉田が55kg級出場に変更したため対戦が実現した。 トップクラスの選手が、みずからのトレーニング負荷を上げるため一階級上の選手と練習をするのはよくあることだ。しかし、試合となると練習のようにはいかない。体が大きく重い相手では、ケガをしてしまうかもしれない。なぜ、そんな危険を冒してまで一階級上で戦うと決めたのか。 「(48kg級世界チャンピオンの)登坂絵莉選手が53kg級で出るということもありましたが、同じ階級でもパワーで勝る外国人選手の圧力を、一階級上の日本選手と試合をすることで感じたかったから。それが世界へつながると思ったんです」 愛弟子を圧倒して昨年の53キロ級を含む全日本13度目の優勝を果たした。4度目の出場が内定したリオ五輪に向けて、吉田はこれまでの3大会と違う調整方法をとろうとしている。これまでは、五輪代表に確定したあとも、一定の間隔で国際大会に出場してコンディションを整えてきた。しかし今回は、「ひょっとしたら、次の試合はリオ(五輪)になるかも」というように、国際だけでなく国内の試合にも出ずに“ぶっつけ本番”で五輪に挑むプランを固めている。 ベテランになるにつれ出場する試合を絞ってきた吉田だが、もし今大会を最後に8月まで試合をしないとなると、レスリング生活で最長のブランクをあけることになる。この五輪へ向けた長い助走期間の設定は、肉体と相談し、ダメージが残りやすくなった自分の体を整えるために考え出したものなのだろう。 「いやもう、おばちゃんだから(笑)」とは、最近の吉田が練習時によく言う軽口だ。 33歳という年齢を感じさせない俊敏さは健在だが、相変わらず食は細いし、先々月から咳が止まらず、それが「ぜんそく」だとわかったのはつい先日のことだ。