ウクライナが肥料輸入国へ 農水政策研が現状報告
肥料の輸出国から輸入国へ――。農水省の農林水産政策研究所がウクライナ農業の現状を報告した。かつてアンモニアの輸出量で世界の上位だったウクライナだが、原料の天然ガスを輸入していたロシアとの関係悪化で、2014年以降は生産が後退。現在、輸入量が国内生産量を上回っている状況だという。 輸入先はポーランドなど。窒素肥料では原価の7割を天然ガス、1割を電気が占めるため、同研究所の後藤正憲氏は「天然ガスの価格が上昇し、電気供給が途絶えがちな現状では、生産コストの上昇は必至」とまとめた。 ロシアへの欧州連合(EU)の対応も裏目に出ている。ウクライナ侵攻に伴う経済制裁で、ロシア産天然ガスの輸入を削減した結果、天然ガスの価格が高騰。安価なロシア産肥料との競争にさらされ、EU諸国には肥料の生産量を3割以上減らした企業もある。 報告では、ウクライナとロシアにおける農業の違いに焦点を当てた。旧ソ連時代、両国は同じ国で農業を近代化した歴史がある。 ウクライナでは、土地利用や水利施設の民営化が進み、企業を中心に穀物や油糧作物など輸出向け作物が拡大している。一方、ロシアは農地や種子などを一元的に管理する情報システムの構築を進めており、集権化の傾向が強まっている。 ロシアは、輸入代替を通じて自給率を高める方針で、主要農作物の種子自給率を30年までに75%以上に増やすなどの目標を掲げる。
日本農業新聞