なぜJリーグは浦和に史上最高額となる2000万円の罰金を科したのか?
Jクラブに対する制裁措置は、規約第142条でけん責から除名まで10段階にわたって定められている。浦和へは最も軽いけん責と、その次の罰金が併科された。第51条第1項と第4項に違反した場合の罰金は、同じく規約第152条で2000万円以下と定められていて、今回は上限の金額が適用された形となる。 過去に2000万円の罰金が科された例は2度ある。 最初は試合直後にサポーター同士が衝突した、2008年5月の浦和対ガンバ(埼玉スタジアム)戦が対象となった。翌6月の理事会をへて、主催の浦和に警備体制上で不備があったとして2000万円の、ガンバには自軍サポーターの挑発行為を防げなかったとして1000万円の罰金が、けん責とともにそれぞれ科された。 次は2010年11月の理事会で、約3年間にわたって主催試合の入場者数を水増し発表してきた大宮に対して2000万円の罰金が科された。このときは大宮の渡辺誠吾社長(当時)が引責辞任し、水増しに関わった幹部2人が解任されている。いずれもJリーグに対する社会的な信用を著しく失墜させた事案だった。 その上で今回の2000万円の罰金をどのように受け止めるべきなのか。実はJリーグ側は、鹿島戦とガンバ戦だけを問題視したわけではなかった。 Jリーグは昨年2月の理事会で、浦和に対してけん責および罰金300万円を科している。2020年10月31日の大分トリニータ戦(昭和電工ドーム大分)で大声を出し、指笛を鳴らした一部サポーターの行為がガイドライン違反と認定されたからだ。 当時の村井満チェアマンは、管理責任を負う浦和に対して「今後、こういうことが起これば、けん責と制裁金では済まない」と厳しい態度で臨むと明言していた。 今シーズンに入ってからは、5月13日のサンフレッチェ広島戦と同18日の横浜F・マリノス戦で、埼玉スタジアムのゴール裏にこんな横断幕が掲出されている。 「フットボールに情熱を戻す決断は誰の責務?PRIDEを奪われたサポーターを無視して忖度を続けた結果、失ったものは何?」 横断幕の掲出にあたっては、クラブ側の事前承認が必要となる。声出し応援の禁止に対して自軍の一部サポーターが強い不満を抱き、行為として表出されると横断幕から予見できたにもかかわらず、必要な啓発や警備体制の強化を浦和側は怠ってきた。 その延長線上で鹿島戦での事案が起こった。Jリーグは浦和へ対外的な声明の発表や問題を起こした一部サポーターへの制裁処分を求めてきたが、浦和側はヒアリング調査にも応じないまま、ガンバ戦での事案が起こった経緯がある。 今月5日に開催された臨時実行委員会で、野々村チェアマンは実質的な最後通告を突きつけていた。その際に明言した最大2000万円の罰金をマックスで科しただけでなく、再発が確認された場合にはさらなる厳罰を科すと言及していた。