日銀・黒田総裁会見6月16日(全文1)景気の現状は緩やかな拡大に転じている
経済が高水準で成長しているのになぜ物価上がらない?
日本経済新聞:幹事から2点質問させていただきます。1点目、物価の情勢についてお伺いします。新年度入りの4月も企業の価格改定っていうのは非常に小規模だったという感触を受けております。経済が高水準で成長しているにもかかわらず物価が弱い状況についてはこれまでもご説明はいろいろあったかと思いますけれども、日本に限らず、アメリカ含め先進国でも同じような状況が今、起きているかと思います。こうした事態の、先進国で共通して起きているという理由について総裁はどうお考えでしょう。 黒田:まず、わが国において潜在成長率を上回る経済成長が続き、需給ギャップが改善している割には物価上昇率がなかなか高まらないということはご指摘のとおりであります。こうした傾向は他の先進国でも多かれ少なかれ共通して見られる現象でありますけれども、その背景について、学会などでいくつかの仮説が指摘されておりますけれども、現時点でコンセンサスは得られていないと思います。 この点、特にわが国についてはデフレが長期間にわたって続いたため、デフレマインドの転換に時間がかかっているということがあると思います。すなわち、賃金や物価が上がらないことを前提とした考え方、あるいは観光が根強く残っているというふうにいえるのではないかと思います。 もっとも、このところ有効求人倍率がバブル期のピークを超え、失業率が2%台後半まで低下するなど、労働需給の引き締まりが一段と明確になる下で、賃金上昇圧力は着実に高まっております。例えば多くの企業において4年連続でベースアップが実現した模様であるほか、労働需給に感応的なパートの時間当たり賃金、ご承知のとおりこのところ前年比2%台後半のしっかりとした伸びとなっております。こうした賃金の上昇は次第に販売価格やサービス価格の上昇につながっていくものというふうに考えております。以上のような点を踏まえますと、わが国の物価上昇率は先行き緩やかに高まっていくというふうに考えております。