「市民団体」「住民運動」を無条件に正しいとメディアは安易に考えてないか 怪しい反対運動の実態
怪しい住民運動
思い出すのは、僕がかつて取材した、怪しい「住民運動」の主のことだ。 彼に関する記事を産経新聞は掲載したが、他の新聞、テレビは黙殺だった。まさに「メディアが伝えない真実」だったわけだ。拙著『メディアはなぜ左傾化するのか 産経記者受難記』でも触れた、このエピソードについて振り返ってみたい。
2003年、僕は国土交通省担当の記者だった。 あるとき、国交省道路局を回っていると、ある官僚がこんなことを言った。 「反対運動をやっている連中は汚いよ。『公共事業に協力する』というから本来はダメなのに市街化調整区域に住宅を建てられるようにしたんだ。それなのに、立ち退かないで未だに元の家に住んでいるんだから。圏央道の延伸計画に反対したことで、住宅が建てられる土地が二つに増えてしまったんだよ」 その地権者の男性(取材当時80歳)は、東京都郊外で農業を営んでいた。この地区(仮にP地区としておく)は圏央道のインターチェンジの建設予定地のすぐ近くだった。そのため、環境の悪化を理由に反対運動を展開していたのだ。 男性は2002年8月、もともとの自宅がある地区から約1キロ離れた別の地区に約530平方メートルの農地を取得していた。この土地は市街化調整区域にあるため、本来、建築物が建てられない。 そこで国交省が「公共事業に協力すれば、市街化調整区域でも住宅が建てられる」と持ち掛け、地元の農業委員会などに公共事業に協力した、とする証明書を発行した。こうした取引は、公共事業ではままあることだ。 これにより、都や農業委員会は「公共事業に際する代替地」と認め、農地からの宅地転用を許可。土地の造成はほぼ終わっていた。 ところが、男性は、もとからあった土地とあわせて二つの土地を相変わらず保有しているというのだ。公共事業に協力した見返りとして、代替地を得ているのだから、そちらに引っ越して、もとの住んでいた土地と建物は明け渡さなければいけないはずなのに、それもしていなかった。そして、土地を二つ持ったまま、反対運動も続けていたのだ。