「好きなこと学び続けられてうれしい」ほほ笑む障害ある学生を隣の席で支える「学生サポーター」
障害があっても大学などの高等教育機関で学びを続けられるよう支援する体制づくりが進められている。今年4月に改正「障害者差別解消法」が施行され、負担にならない範囲で障害者の要望に対応する「合理的配慮」が全ての大学で義務化された。「進学の選択肢が広がる」と期待される一方で、教職員や学生への周知が課題となっている。(江口朋美) 【写真】「高度難聴」周囲の無理解、教科書だけで勉強した…九州大病院医師が研究する「難聴児支える体制」
音声認識アプリ利用した講義、誤字や専門用語を修正
12月上旬、熊本学園大(熊本市)で、聴覚障害がある外国語学部4年の女子学生(22)は、音声認識アプリを利用して講義を受けていた。専用マイクを付けた教員の話した言葉が、女子学生と隣に座る学生サポーターのタブレット画面に表示され、学生サポーターが誤字や専門用語を修正すると、女子学生のタブレットに反映されていった。
支援体制が充実していると知り、進学先に選んだ。中国の文化などが専門で「好きなことを学び続けられてうれしい」とほほ笑んだ。
同大は2016年度に「インクルーシブ学生支援センター」を設けた。修学支援などを行う「しょうがい学生支援室」や保健室などが連携して学生をサポート。支援機器の貸し出しや試験の別室受験などの配慮が受けられる。学生サポーターは、講義で要約筆記などを担う有償ボランティアで、24人が登録する。
四肢まひがある社会福祉学部3年の男子学生(20)も、学生サポーターに講義のメモを取ってもらったり、感想文を代筆してもらったりする。「支障なく講義を受けられて助かっている。将来は社会福祉士になりたい」と夢を語った。
近年は毎年度、約80人の障害学生が在籍している。発達や精神に障害のある学生が増えて特性も多様化しており、スタッフを増員して対応。相談室には臨床心理士などを配置している。
福岡大、全学生を対象に「障害学生支援に関する授業」検討
日本学生支援機構によると、23年度に大学や短大などに在籍する障害学生は5万8141人で、10年前の4倍以上に増加。支援担当部署を設置する動きも進み、同年度の調査では3割近くが「専門部署・機関を設置」と回答した。福岡大(福岡市)は今年4月に専門部署「障がい学生支援センター」を新設し、全学生を対象に障害学生支援に関する授業を検討している。