福原愛の次に中国で有名なWBO世界王者・木村翔が大晦日決戦で誓う無名返上
WBO世界フライ級タイトルマッチが大晦日に大田区総合体育館で行われることが21日、都内のホテルで発表された。王者の木村翔(28、青木)の初防衛戦で同級1位で元WBC同級王者の五十嵐俊幸(33、帝拳)が指名試合として挑戦する。この試合はWBA世界ライトフライ級王者、田口良一(30、ワタナベ)とIBF同級王者、ミラン・メリンド(29、フィリピン)の統一戦をメーンにしたトリプル世界戦のセミファイナルとして行われる。 大晦日のカードにボクシングファン好みの日本人対決が組まれた。 7月に敵地の中国・上海で、北京、ロンドンと五輪連覇の英雄、ゾウ・シミンから11回TKOでベルトを奪う“世紀の番狂わせ”を起こした木村が、アテネ五輪出場経験もある元WBC世界フライ級王者の五十嵐を指名挑戦者として迎え討つのだ。 「格でいえば、五十嵐選手が全然上。初防衛は難しいと思っているが、パンチが当たれば必ずKO決着になる。王者だけどチャレンジャーの気持ちを忘れず泥臭くいく。死にもの狂いで取ったベルト。誰にも渡したくない」 木村は自らを「雑草ボクサー」と言う。 高校のボクシング部は1年で辞め、“悪い道”へ走って8年ものブランク。黒星デビューの後、一度も負けていないが、その間、難病「潰瘍性大腸炎」を再発させた。昨年の大晦日は友人と「部屋でグダグダしながら」小国以載が無敗の怪物王者、ジョナタン・ グスマンを判定で下したIBF世界Sバンタム級戦をテレビで見ていた。 「次の年に大晦日の大舞台でやれるとは想像もしていなかった。運を持ってますね」 一方、五十嵐は対照的にエリート街道を歩んできたボクサーではあるが、「大きな舞台に戻ってこれて嬉しいが、もう次のチャンスはないと思っている」と、思いつめるほど苦難の道を歩いてきた。2013年4月にWBC世界フライ級王座の2度目の防衛戦でアマ時代から因縁のある八重樫東(大橋)の挑戦を受けて判定で完敗。以降、4年半、ノンタイトル戦を8試合消化しながらチャンスを待った。五十嵐自身も、「出口の見えないトンネルの中を走っているような4年半だった」という。挫折を知った元チャンプをもはやエリートのくくりで語るのはやめた方がいいのかもしれない。 実は、五十嵐にもゾウ・シミンと因縁があった。 アマチュア時代に五輪予選も含めて2度対戦して2度敗れていた。「僕にはリベンジという意味があった」。なのに熱望していたゾウ・シミン戦は、木村に先を越された。 「執念でとる。心を折った方が負ける」 五十嵐は記者会見でそう語った。 ちなみに、この試合の勝者は敵地中国で再起したゾウ・シミンと防衛戦を行う契約になっている。