福原愛の次に中国で有名なWBO世界王者・木村翔が大晦日決戦で誓う無名返上
対する五十嵐は4年前の八重樫戦では14、15キロにも及ぶ減量に苦しみ「リングに上がることがゴールだった」。再起戦は、スーパーフライに階級を上げていたが、「自分のメリットは何か」と考えたとき、スピードのボクシングに立ち返った。必要以上の筋肉をそぎ落とし、普段60キロあった体重を57キロまでに減らすことで今では減量苦から解放されている。 今年4月の前哨戦は目をカットして負傷判定になるなど、ここ数試合は「切りやすい、流血しやすい」というネガティブな要素もある。だが、これも元化粧品メーカー勤務の妻、栄子さんのアドバイスで「切りやすいのは乾燥肌が影響しているから。奥さんにいい化粧水を選んでもらって予防はできている」という。 「僕も気持ちは強いが木村選手はそれ以上に精神的に強い。スタミナ、精神力で負けたくない。一時はスピードだけのボクサーだったが、今はショート、ミドル、ロングと、どの距離も使いこなせる。そのとき、そのときで臨機応変に対応できるようになっている」 スピードとテクニックは五十嵐が上。木村がまともにボクシングをすれば五十嵐にポイントを奪われ続けるだろう。だが、パンチ力と突進力は木村が勝っている。木村の勝機は五十嵐がさばききれないほどのプレスをかけ続けて、乱打戦、消耗戦にもちこめるかどうか。この試合は、どちらにでも転ぶ可能性がある。 陳腐な表現になるが、五十嵐の言葉通り、先に心を折った方がベルトを失うことになるだろう。その分かれ目は、欲という名のモチベーションと、人生の挫折の数の差にあるような気がする。 「今もまだ夢の中にいるみたいですが、必ず防衛して夢の続きを見たい。成し遂げたい夢はたくさんあるんで」 チャンピオンになっても酒屋の配達バイト生活から脱却できない木村は、「まずは生活の安定だけど、ウブロの時計も欲しいし車も欲しい」と物欲をむきだしに。 そして、「一番の夢は、春のTBSのオールスター感謝祭で赤坂マラソンに出させてもらうこと。昔からテレビで見ていて、いつか走りたいと憧れていたんです。森脇健児さんには負けません。お願いします」と、近くにいたTBSの関係者に目線を送っていた。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)