4階級制覇王者の井岡一翔は難関のランキング1位の指名挑戦者に勝って愛する息子をリングに上げることができるのか?
シントロンは、8月の江藤光喜(31、白井・具志堅スポーツ)との指名挑戦権をかけた再戦では、2ラウンドにリーチ差を生かした遠目から綺麗な左ストレートを放ってダウンシーンを作った。攻守を一転した際の左右のスイング系のパンチにも威力はある。追う際の入り際に要注意だ。 だが、飯田氏は、「江藤をダウンさせた左ストレートは、よほど油断をしない限りクリーンヒットされることはない。怖くない。井岡は江藤より身長が低いため、あの左ストレートのドンピシャの位置に井岡の顎はない」と言う。 「確かにフックは注意だが、その際、右のガードが下がる。そこを狙えば井岡の左フックは当たるでしょう。シントロンは返しのパンチもシャープじゃないので、左ストレートを打ってきた後に井岡にチャンスがある。あえて打たせるのも手かも。怖さは感じない」 飯田氏の結論はこうだ。 「シントロンの足を考えると中盤までにつかまえて倒すのは難しいでしょう。中盤までコツコツとペースを奪い、終盤に仕留めるパターンがひとつ。ただポイントが取れていないというラウンドが続くようであれば、判定決着にもつれこむ可能性もあるのかもしれない」 筆者の結論も同じく井岡の終盤KO勝利である。ただし、出入りだけではなく、4階級制覇を果たした試合のようなインサイドに飛び込み打ち合う勇気を見せることができたら、の条件付きである。 計量後の囲み取材の中で井岡が一瞬だけプライドをちらつかせた場面があった。WBSSを優勝した井上尚弥、WBA世界ミドル級王者に返り咲き、V1に成功した村田諒太(33、帝拳)の2人の名前を出され、ボクシングが注目を集めた年をどう締めくくりたいか?と聞かれたときにほんの少し顔色を変えたのだ。 「ボクシングの世界チャンピオンとして、やるべきこと、みせべきこともあるのでしょうが、自分でやっていることは一人でも多くの人を巻き込みたいというより、僕の見せ方で何かを感じさせたい。1年が終わる最後の試合で、その責任、任務もある。そこはどこかで意識しながらやっている。僕のやってきたことを表現すれば間違いなく何か感じてもらうものはあると思う。必ず勝って締めくくりたい」 令和のボクシング界の3大カリスマの一人として、井岡は、どんなボクシングで4階級制覇王者の威厳を保つのだろうか。そして愛する息子、磨永翔君をリングに上げることができるのだろうか。 またJBC(日本ボクシングコミッション)は、井岡が左腕の入れているタトゥーについて「試合中に汗で簡単に消えないようなペイントを施して見えなくすること」を通達している。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)