4階級制覇王者の井岡一翔は難関のランキング1位の指名挑戦者に勝って愛する息子をリングに上げることができるのか?
一方のシントロンは100グラムアンダーでパス。驚くほどリラックスしていた。 「すべての準備は完全に整った」 計量後の食事は「タンメン」だとか。 「せっかくだから日本のものを食べたい。野菜の乗ったラーメン(タンメン)がいいかな。寿司でもいい。いつもの試合前と違うものを食べても何も問題ないよ」 神経質そうな顔をしているが、堂々としたものだった。五輪出場2度の経験からくるものだろうか。 ロンドン五輪はベスト8、リオ五輪は、1回戦敗退だが、WBSSの準決勝でWBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者、井上尚弥(26、大橋)と対戦し1ラウンドだけ互角に戦った同じプエルトリコのエマヌエル・ロドリゲスにアマ時代に2度勝っている。大手プロモート会社のトップランク社の契約選手で同時期に契約したリオ五輪のバンタム級銅メダリストのシャクール・スティーブンソン(米国)は、先に、この10月にWBO世界フェザー級王者になった。 井岡は「2度、五輪に出ているボクサー。僕も目指した場所だけにリスペクトはある。プロで(元オリンピアンと)拳を交えるのは楽しみ。世界王者として挑戦者にプロの厳しさと王者の強さを見せつけたい。人生はいつでも挑戦。この試合は簡単ではない。厳しい試合になるが、勇気をもって挑む」とも語った。 「初防衛戦は取るより難しい」とも言われている。達成感やプレッシャー。それを過去に3度経験してきたのは、井岡の強みではあるが、そこに加えてランキング1位との指名試合。しかも、シントロンは長身のサウスポーで足を使ってくる。予備検診でリーチ差は12センチあった。サウスポーとの対戦経験は豊富ではなく不安要素ではある。 果たして井岡は勝てるのか。4階級制覇王者の価値をさらに高める試合ができるのだろうか。 元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏にシミュレーションを願った。 「シントロンは長身の左構えで足を使う。距離と足を生かしたヒット&アウエーを徹底されて井岡の攻撃が空回りし逃げ切られてしまうのが、最悪想定の負けパターンだろう。確かに昔の井岡なら、その危険性はあった。だが、スーパーフライ級に上げてからの井岡は、しっかりと前に出て攻め込むスタイルを身につけている。今回、その不安要素は消えたと見る。プレスをかけながら、上下に打ち分けて、前へ行く形を作っていけば井岡ペースになる」 それでも単調に真っすぐに追うと危険だ。井岡も「プレスのかけ方には工夫が必要だ」と研究していた。「シントロンは反応がいい選手なので、うまくフェイントなどを使いながら、真っすぐ追うのでなく、外から追ったりコーナーへ追い詰めたりしながら消耗させていきたい」とは飯田氏の意見。