各地を彩った2024年の秋フェス&イベントより、初開催の都市型イベント〈DEFOAMAT〉をレポート
〈朝霧JAM〉や〈FESTIVAL de FRUE〉〈ボロフェスタ〉をはじめ、今年も各地で大小さまざまに開催され、行楽シーズンを音楽で盛り上げた秋フェスや街フェス。その中から、今年初開催となったアートと音楽の都市型のフェスティヴァル〈DEFOAMAT〉のレポートをお届けします。 “アジアの文化的連帯の中で新しい社会の在り方を模索していくこと”をコンセプトに、アートと音楽の両軸でアジア各国からアーティストを招聘して開かれた本イベントは、東京・代官山を舞台とした周遊型イベントで、10月19日(土)~20日(日)の2日間にわたり開催されました。 アート・プログラムとして、フォレストゲート代官山にて、インドネシアのアート・コレクティブ“ルアンルパ”による東京をテーマとしたリサーチプロジェクト〈Living Room〉が公開されたほか、代官山T-SITE駐車場付近では、日本のアートコレクティヴ“SIDE CORE”が野焼きと暗渠ツアーを実施。インドネシアを代表するアーティスト、エコ・ヌグロホの個展〈MORE LOVE ABOVE THE PEACE〉もART FRONT GALLERYにて開催されました。 また、マリ共和国出身の教育者にして京都精華大学の元学長ウスビ・サコと津田塾大学教授の丸山淳子、そして立命館サステイナビリティ学研究センター客員研究員の堀田あゆみとナリワイ主宰の伊藤洋志の2組によるトークセッションも実施。さらに、アート雑貨や古道具のマーケットも開かれ、カルチャーを楽しみながら社会について考えることができました。 10月19日は、UNIT/SALOON、晴れたら空に豆まいて、T-SITE内カフェラウンジ「Anjin」「GARDEN GALLERY」の4つのステージにて音楽ライヴも開催されました。 「佐渡おけさ」「ソーラン節」といった日本人には馴染み深い民謡をサイケ、レゲエ、ラテンのアレンジで聴かせながらも、観客に“舟をこぐ”動作を呼びかけるなど、場内一体となって歌って踊り、会場を一気にお祭りムードに染め上げた民謡クルセイダーズ。サイケデリックで陶酔的なグルーヴにのせた新感覚のポップ・ソングを披露しながらも、初めての代官山に「ドキドキ!」(VIKING)とお茶目なMCで会場をホッコリさせた新世代タイ・インディ・シーンの象徴的バンド“Soft Pine”。完全に日が暮れた時間に、物語性あふれるエキゾなサウンドと影絵で幻想的な世界を創出した滞空時間。ほか、タイ・チェンマイ出身の4人組インディポップ・バンド“YONLAPA”やさらさ、HOME、寺尾紗穂、ASOUND、VIDEOTAPEMUSIC、MOOLA、大石始、DJ YESYES、OMK(YOUNG-G,MMM, Soi48)と14組が出演。カラフルで個性豊かなラインナップに、各ステージをまわり切れないのが口惜しいほど。 この日、UNITにてバンド・アクトのラストを飾ったのは、韓国の口承伝統芸能パンソリを基盤にディスコやニューウェイヴの要素も取り入れたバンド・サウンドを聴かせるオルタナティヴ・ポップ・バンド“LEENALCHI”。ソロ・合唱・ラップ・ダンスを通して物語を伝える3人の歌い手と2人のベーシストとドラマーという異色の構成の彼らは、幕開けから、パンソリの演目「水宮歌(スクンガ)」を題材にした2020年の1stアルバム『SUGUNGGA』よりキラー・チューン「Tiger is Coming」を演奏。それぞれ別の個性を持ちながらも力強いチョン・ヒョジョンとチェ・スインの女性二人による歌唱とミニマルな人力ディスコ・ビート、ワイルドなベース・サウンドにのっけから観客を釘付けに。続けて3人のうち唯一の男性、アン・イホの味わい深い歌声との男女混成ヴォーカルがグルーヴを生み出す「Crying Softshell Turtle」や、鳥の鳴き声のような独特の発声が高揚感を誘う韓国ドラマ『ジョンニョン:スター誕生を視聴』のサントラ「Bird」など、アンコール含めてたっぷり10曲以上を披露しました。 2000年代初頭のLCDサウンドシステムなどに代表されるミニマルなディスコ・ビートに、アタックの強さが病みつきになる韓国の伝統的な歌唱がぶつかり合う狂熱のサウンドに酔いしれたあとは、残るライヴ・パフォーマンスとしてOMKによるDJ。タイ音楽からプリンス、歌謡曲までも呑み込んだプレイで、観客たちをさらに盛り上げました。 音楽プログラムのオールラストは、晴れたら空に豆まいてでの民謡クルセイダーズに密着したドキュメンタリー『ブリング・ミンヨー・バック!』の特別上映会。まさに楽しみながら“学びの秋”が満喫できるイベント〈DEFOAMAT〉の初日は締めくくられました。 Photo by Ryo Mitamura