凱旋門賞に参戦するシンエンペラー（左）と武豊騎乗のアルリファー

［ＧⅠ凱旋門賞＝２０２４年１０月６日（日曜）３歳上、パリロンシャン競馬場・芝２４００メートル］ 　日本で土日に３つの重賞が行われる週末だが、世界の耳目を集めるのはフランス・パリロンシャン競馬場で行われる大一番。今年は混戦ムードが漂い、馬券が発売される日本国内でも人気が割れて妙味がありそうだ。 　日本調教馬、そして欧州以外の調教馬として初のＶを目指すシンエンペラー（牡３・矢作）は、前哨戦のＧⅠアイリッシュチャンピオンＳで僅差の３着。直線半ばまでなかなかスペースがなかった中で、最後は猛然と伸びた。陣営が完調手前を認める仕上がりで好走したことは、高い能力の証し。全兄ソットサスが２０２０年のこのレースを勝っている血統背景も頼もしい。欧州ブックメーカーは軒並み２～３番人気のオッズに設定しており、フランス生まれの栗毛馬にとってＧⅠ初制覇がこの夢舞台となる可能性は十分にある。 　現地で評価を上げているのは地元馬ソジー（牡３・Ａファーブル）だ。仏ダービーでは３着に敗れたが、続くＧⅠパリ大賞を勝つと、前走のＧⅡニエル賞では仏ダービー馬ルックドゥヴェガなどを相手に横綱相撲でＶ。歴代最多の凱旋門賞８勝を誇るファーブル調教師が記録をさらに伸ばすことに期待が寄せられている。父は０９年の勝ち馬シーザスターズ。同産駒として初の優勝を、同じく初Ｖを狙うギュイヨンの手綱で狙う。 　前述のニエル賞で３着に終わったルックドゥヴェガ（牡３・Ｃ＆Ｙレルネール）だが、それまでは人気の中心に推されていた。前走は３か月ぶりの休み明けに加えて、先手を取る形になって本来の力を発揮できなかった面もある。仏ダービーまでのデビュー３連勝は力強い内容の連続。真価を発揮すれば、覇権奪回のシーンもあるだろう。 　アイルランドの名門Ａオブライエン厩舎は直前まで出走馬を吟味する見通しだが、今年の愛ダービー馬ロスアンゼルス（牡３）は参戦の意図が明確。前走のアイリッシュチャンピオンＳはシンエンペラーに伸び負ける形での４着ながら、主戦ムーアの手に戻れば違う走りが望める。なお、ディープインパクト産駒でＧⅠを６勝している僚馬オーギュストロダン（牡４）はＧⅠジャパンカップを最後に引退して種牡馬入りするプランが発表されているが、馬場が良ければ凱旋門賞に出走する可能性も残されており（９月２９日時点）、動向を注視したい。 　８月の独ＧⅠベルリン大賞を制したアルリファー（牡４・Ｊオブライエン）は武豊との新コンビで注目を集める。前走は初めての２４００メートルが懸念されていたが、それを払拭する５馬身差の完勝。先週、アイルランドに駆けつけてコンタクトを取った名手は「すごくいい馬」と好感触を得ており、１１度目の凱旋門賞騎乗で大願成就を目指す。 　過去１０年のうち牝馬が５度優勝している点は見逃せない。前哨戦のひとつである仏ＧⅠヴェルメイユ賞を制したイギリスのブルーストッキング（牝４・Ｒベケット）は、追加登録料を支払っての参戦が見込まれる。７月の英ＧⅠキングジョージ６世＆クイーンエリザベスＳでも２着と好走しており、出走に踏み切ればノーマークにはできない。また、ソジーを擁するファーブル厩舎からはマルキーズドゥセヴィニエ（牝５）も出走予定。２４００メートルは未経験だが、昨春から１０戦オール連対、今年は４戦全勝という堅実さは高く評価できる。 　他にも、２戦続けてソジーに食い下がっているフランスのデリウス（牡３・ＪＣルジェ）、良馬場前提ながら決め手に富むドイツのファンタスティックムーン（牡４・Ｓシュタインベルク）、大崩れのない地元のアヤザーク（牡５・Ａフアシェ）などが差なく続く。