「SNS無視できぬ情報源に」「物語性必要、リスクも」「第三者の拡散、選挙戦左右」 ネット選挙解禁11年、民意どう形成、課題
東京都知事選で石丸伸二氏の知名度が上がったのはユーチューブやSNSの効果だ。選挙前にさまざまな動画を作り、その切り抜きの短い動画によって石丸氏は広く認知された。選挙戦がスタートすると、再生数が増えて広告収入があるからと街頭演説にユーチューバーが集まった。 兵庫県知事選での斎藤元彦氏は「改革に手を付けたことで既得権益層から反発を受け、テレビ・新聞などのオールドメディアから袋だたきに遭い、それに一人で立ち向かった」との物語性が受け入れられ、ネットで「バズる」展開となった。 来年の参院選でも多くの候補者がSNSに力を入れるだろうが、成功する人は少ないだろう。マイナスになるリスクもある。物語性がなければ存在感を出すのは難しく、支持者による他陣営への誹謗(ひぼう)中傷対策も必要だ。 石丸氏の選挙に関わったボランティアの中には、斎藤氏の陣営に加わった人もいる。そうした経験が今後ノウハウとしてまとまっていくはずだ。
ネット選挙は急速に進化しているが、公選法はそれに対応していない。質の高い動画を作るのにはお金がかかるが、そうした技術を持つ人に支払う規定がない。現状のままで良いのかを真剣に議論する時期だ。 × × × ふじかわ・しんのすけ 1953年大阪市生まれ。2022年に「藤川選挙戦略研究所」を設立し、都知事選で石丸氏陣営に関わった。 ▽「オールドメディアとの対立構図」に注目と支持―ネットコミュニケーション研究所代表の中村佳美さん 選挙でのSNSの影響は、兵庫県知事選の斎藤元彦氏と、衆院選での国民民主党の玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)代表で異なる。玉木氏は短時間の「切り抜き動画」を活用し、SNS上で能動的に情報を拡散させる戦略を採用した。斎藤氏はオーソドックスな活用にとどまり、本人の発信というより、支持者たちの投稿や拡散が盛り上げる原動力となった。 斎藤氏を支援する目的で立候補した政治団体代表の立花孝志(たちばな・たかし)氏は「SNS対オールドメディア」という対立構図を作り上げ、大きな注目と支持の流れを生み出した。新聞やテレビへの不信感が広がる中、有権者は「真実」をSNSに求め、立花氏をその情報源として信頼する風潮ができた。