「SNS無視できぬ情報源に」「物語性必要、リスクも」「第三者の拡散、選挙戦左右」 ネット選挙解禁11年、民意どう形成、課題
インターネット選挙が解禁されてから11年。X(旧ツイッター)やユーチューブなど、交流サイト(SNS)を活用した選挙活動への注目が急速に高まっている。既存政党の戦略や有権者の投票行動が大きく変化する中、民意はどこへ向かうのか。失職した斎藤元彦(さいとう・もとひこ)氏が再選された11月の兵庫県知事選の分析や、今後の課題を専門家に聞いた。(共同通信=石原知佳、中村岳史、大根怜) 【写真】兵庫県知事選、N党立花党首が「援護射撃」 動画再生数は1500万回、斎藤氏の12倍
▽資質や疑惑で盛り上がり、政策は争点にならず―岡本哲和関西大教授 兵庫県知事選後、有権者約千人にインターネット調査を行った。詳細な分析は今後だが、再選された斎藤元彦氏に投票した人のうち47%が候補者のX(旧ツイッター)を参考に投票先を決めたと回答。一方、敗れた稲村和美(いなむら・かずみ)氏に投票した人では22%にとどまった。SNSは今や無視できない情報源になった。 2013年にインターネット選挙が解禁され、SNS戦略への注目はここにきてこれまでにない高まりを見せた。疑惑告発文書問題で議会に不信任を突きつけられた末の出直し選挙。異例ずくめで耳目を集め、選挙区には無党派層が多い大都市圏も含む―。対立が過熱しやすいSNSと親和性の高い条件もそろった。 そもそもネット選挙解禁で期待されていたのは政策などの選挙情報を十分に有権者に伝えること。ただ今回は、斎藤氏の資質の是非や、疑惑が真実か否かの二者択一の問いが提示されて盛り上がり、政策は争点にならなかった。
投票率は上がったが、似た意見ばかりに接する「エコーチェンバー」、違う意見が届かない「フィルターバブル」など負の面も目立った。ネット選挙がより浸透する米国ではこうした傾向が社会の分断を進めたとされ、日本でも顕在化する可能性は高い。 ネットは地盤のない候補者も活用しやすく、公正な選挙に役立つとされてきた。だが今後は各陣営が持ちうるリソースを集中投下する情報戦になりそうだ。ファクトチェックや多角的な情報へのアクセス確保が重要さを増す。有権者が情報を分析し判断する力がますます問われる。 × × おかもと・てつかず 1960年大阪府生まれ。専門は情報政治学。関西大政策創造学部教授。 ▽選挙は地上戦4割、空中戦3割、SNS3割―選挙プランナーの藤川晋之助さん インターネット選挙が解禁されて10年以上たつが、選挙というのは地上戦5割、空中戦4割、SNS1割で、SNSを見ている人は選挙に行かないからあまり効果がないと言ってきた。しかし、2024年で変わった。今は地上戦4割、空中戦3割、SNS3割と言っている。SNSは5割の力を入れても良いぐらいだ。