理系学生の箱根駅伝!? 未来の自動車人を育む「学生フォーミュラ」が熱い!
クルマ版の鳥人間コンテスト
学生フォーミュラと聞いて、「体育会自動車部対抗の大学フォーミュラシリーズか?」なんて想像をめぐらせる好事家もおられるかもしれない。しかし、実際はまるでちがう。 【写真】「理系学生のための箱根駅伝」、あるいは「学生限定のクルマ版の鳥人間コンテスト」ともいえる「学生フォーミュラ日本大会」の様子をもっと詳しく(59枚) では、学生フォーミュラとはなんぞや……の雰囲気を手っ取り早くつかむには、この春に公開されたアップルのコンピューター「Mac」のCM動画をご覧いただくとよい(現在もYouTubeで閲覧可能)。同動画には東京大学の学生フォーミュラチームが、自分たちでマシンを設計、製作して、大会のコースを疾走するまでの流れが描かれている。 その動画からもイメージできるように、学生フォーミュラとは、学生たちの自作によるフォーミュラスタイルのレーシングカーを使った競技会で、「フォーミュラSAE」という世界共通のルールのもとでおこなわれる。 SAEとは「米国自動車技術者協会」のこと。1981年、当時の日本自動車産業の台頭に危機感をおぼえたSAEが人材育成やリクルーティング活動の一環として創設したのが、フォーミュラSAE=学生フォーミュラである。そんな学生フォーミュラが、現在では世界23カ国で競技会が開催されて、約60カ国から参加を集める世界的イベントに成長したというわけだ。 その日本大会は2003年からスタートして、この2024年で22回を数える。参加するのは、日本の大学、国立高等専門学校(いわゆる高専)、専門学校を単位とした有志チームで、国外からの参加も受け付けられる。大会は例年秋に開催されている。ただし、参加チームは大会が終了するやいなや翌年用マシンのコンセプトづくりや設計をスタートさせるというから、ほぼ1年がかりの活動となる。 そんな学生フォーミュラを、無理やりたとえるなら、「理系学生のための箱根駅伝」、あるいは「学生限定のクルマ版の鳥人間コンテスト」といったところだろうか。
まさに自動車ビジネスの縮図
日本大会を主催する自動車技術会が「次世代の技術者育成を目的とした、イチからモノをつくりあげる総合競技会」と定義する学生フォーミュラは、単なる自作マシンによるモータースポーツ大会ではなく、大きく分けて「静的審査」と「動的審査」という2つの審査によるポイントによって争われる。 もう少し詳しくいうと、静的審査は「プレゼンテーション」「コスト」「デザイン」、そして動的審査は「アクセラレーション」「スキッドパッド」「オートクロス」「エンデュランス」「効率」という項目別に審査される。各項目には75~275ポイントが振り分けられており、基本的にはこれらを合計した1000ポイント満点の総合ポイントで順位が決まる。 なかでも、学生フォーミュラならでは……なのが、静的審査だ。静的審査は、審査される学生チームを自社製のマシンを売り込む仮想の設計会社、審査員を商品化・生産するクライアントと想定して、審査するという。 プレゼンテーション審査では、マシンのコンセプトや長所を、わかりやすくアピールすることが求められる。コスト審査は文字どおり、いかに低コストのクルマづくりができているか、原価計算がいかに正しくできているかが問われ、提出されるコストリポートはA4用紙で2000枚以上になることもあるというほど緻密で厳格だ。 そして、デザイン審査も見た目やカッコよさを競うものではなく、あくまでクルマとしての設計の評価で、主にコンセプトに合致した設計であるかどうかが審査される。 いっぽうの動的審査は、よくも悪くもシンプルだ。アクセラレーション審査は0-75m加速、スキッドパッドは8の字コースのコーナリング、オートクロスは直線・ターン・スラロームを組み合わせた一周約800mのコースでのハンドリング、エンデュランスはそのオートクロスコースを約20km走行した性能が審査される。最後の効率はエンデュランス走行時の燃費(もしくは電費)の評価だ。このときのドライバーも各チームの学生がつとめる。