団塊の世代・沢田研二のキャリアから学ぶ “自分を更新する生き方”とは?
「続けることしか信じられない」という歌詞
しかし、2017年には「忖度」が流行語となり、2020年頃から「同調圧力」という言葉が広く認知されるようになり、風向きが変わり出す。空気を読みすぎることへの違和感が注目されるようになっていくのだ。 彼のきつい言い方に「一言多い、厳しすぎる」という指摘はまだまだあるものの、自分のやりたいようにやるライブ構成や、意思を曲げない生き方は、「同調圧力に屈しない強さ」として評価されることも増えてきた。そんなふうに、彼自身は変わっていないが、時代が変わり、向かい風が追い風になってきた部分もある。ただ、それは沢田研二が、自身への無理解な言葉に腹を立てながらも、腐らず燃え尽きず努力を重ね、ライブと楽曲制作を続けていったからこそ巡ってきたものだろう。 しかも、平成の中盤からは、YouTubeなどの発信ツールが増え、テレビ離れが加速。ライブをメインに切り替えるアーティストも増えていく。1990年代に一世を風靡した安室奈美恵も2007年頃からテレビ出演を減らし、ライブ活動中心に移行している。そんな時代の流れから考えると、90年代に「自分にお金を払ってくれる人にだけパフォーマンスをする」というスタイルに変えたジュリーは、ある意味、時代の先を読んでいたともいえる。 2000年9月リリースした『A・C・B』の中には、「続けることしか信じられない」という歌詞がある。沢田研二の作詞だが、自信を失わず、周りの評価に揺さぶられず続けることは、大変な意志の強さと努力が必要だが、目標をかなえるには、一番確実な方法なのだ。
田中 稲