水のエレベーター感覚味わえる「毛馬こうもん」通過
水のエレベーター感覚味わえる「毛馬こうもん」通過 THEPAGE大阪
毛馬閘門。「けま」の「こうもん」と読む。どちらも難読熟語だが、毛馬は江戸期の俳人与謝蕪村のふるさとだ。閘門は水位差を調節して船の航行を助ける施設で、全国的にも珍しい。毛馬閘門は水都大阪らしい施設ながら、市民にはややなじみが薄い。そこで、このほど開かれた見学会に参加し、船に乗り込んで閘門通過を体験してきた。
閘門は船を乗せた水のエレベーター
このイベントは「淀川大堰(おおぜき)・毛馬閘門見学会」。大阪市で開催された「ミズベリング世界会議」の連携プログラムとして企画された。 閘門は水位の高低差がある河川で、船を安全に通過させるための施設。水位差のある川をふたつの扉で仕切り、その中に船を入れて扉を閉める。扉と扉の間の閘室の水位を、船の進行方向にある川の水位と同じ高さにして、水位差を解消。最後は進行方向の扉を開けて、船を送り出す。さながら水のエレベーターだ。 明治期、日本初の大規模河川改修となる淀川大改修工事に伴い、新しい淀川と旧淀川の大川との間の舟運を守るため、新旧淀川の分岐点である毛馬に閘門が作られることになった。現在稼働している毛馬閘門は1974年に完成した。 それまで舟運を守っていた毛馬第一閘門はまもなく役割を終えたが、遺構周辺が淀川河川公園長柄河畔地区として整備されているため、重要文化財指定の雄姿にふれることができる。見学会では旧第一閘門の水路跡などを巡回した後、淀川上流へ500メートルほど歩いて移動。左岸にある毛馬緊急用船着場から船に乗り込み、水上から毛馬閘門へ向かった。
徐々にだが確実に水位が下がっていく
毛馬閘門が近づく。閘門では陸上交通のように信号で航行が制御されている。青信号で目の前の扉が開く。船は水がしたたり落ちる扉をくぐって閘室内部に進入。後ろで扉が閉じる。案内ガイドが「これから少しずつ水位が下がっていきます」と説明。水位差は気象状況などで異なるが、取材時点では上流の淀川の水位が下流の大川と比べて、1.5メートルから2メートルほど高いという。 ゆっくりだが、確実に水位が下がっていく。岸壁の水に濡れていた跡の幅が広がってくるから分かる。ふと気づくと、さきほどまで見えていた川岸の遊歩道がまったく確認できないほど下がっていた。船から外の景色を見上げる目線になる。やがて水位差がなくなったのだろう。下流側の扉が開き、船は大川へ飛び出した。 その後、水上散策をしばし楽しんだ後、八軒家浜の船着場で解散。親子で参加した女性は「毛馬閘門を通過したのは初めてで、とても印象に残る体験でした。水都大阪を知る点で、閘門を体験できるクルーズ企画が増えるといいですね」と話していた。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)