プロ野球契約更改、推定年俸のなぜ?
「昔は、年俸を黙っている理由のひとつに、他の選手への影響などがあったけれど、現在は多くの選手がインセンティブ(出来高払い)を結んでいて、実際に発表されている年俸の金額と、もらっている金額が大きく違う選手が少なくないと思う。そうなると、どれが年俸か?ともなってくるし、すべての手取り額を表に出せば、“え?そんなにもらっているの?”という感情が、チーム内外に生まれてくる可能性もある。なおさら明らかにできない状況になっている」 確かに近年は、出来高払いの契約を結ぶ選手が増えてきて「実は……」という話をよく聞く。3年前に中日から大幅ダウンを提示され、自由契約となって巨人に移籍した井端弘和氏もインセンティブが加算され、実質の手取り年俸が、推定年俸とは大きく違っていたという。 古い話で恐縮だが、記者との問答でも、ほとんど推定をさせなかった阪神時代の新庄剛志の推定年俸が2800万円と報じられ、その年活躍した他の亀山努らが、「新庄と比べておかしい」と、ごねたことがあった。実際は、新庄の年俸は2800万円とは違ったらしいが、年俸が明らかになることは、いろんな波紋を起こしてしまうのが、日本の野球界。その理由として、代理人交渉は弁護士に限られるなどの制約があり、まだ代理人制度が、メジャーのようにいきわたっていない日本のプロ野球制度の問題があるのだろう。 ファンに夢を売るためにもガラス張りに正確な金額を明らかにしたほうがいいという議論もあるだろうが、納税の義務だけを正確に果たしているのならば、推定金額が一人歩きするのも、お金を持っていることを自慢する人は品格が疑われ、奥ゆかしさが美徳とされる日本の文化らしくていいのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)