プロ野球契約更改、推定年俸のなぜ?
一方、メジャーの場合も球団や代理人が発表するわけではなく、すべてオフレコの中での似たような取材手法で、金額や詳細なインセンティブ条項などが明らかにされる。だが、その数字は正確で信憑性が高く、のちに球団や代理人からクレームが入るケースはほとんどない。報じるのは、球団や代理人との太いパイプを確立させている大手の地元メディアの番記者か、全国区メディアの敏腕記者。日本のような禅問答ではなく、おそらくストレートに金額を聞けて、それをメモか音声レコードしているのだろう。 米国は納税の問題で、不透明な金の流れに厳しい監視の目があり、メジャーリーグには戦力均衡のため資金力の豊富な球団に対して課せられる贅沢税の制度があるため、年俸を正確に出さねばならないという土壌と社会性がある。「ベースボール・リファレンス」というデータサイトには、推定ではない正確な年俸データが掲載されているほど。フォーブスが毎年、長者番付けを発表するが、高額な年俸を取ることは、決して隠すような後ろめたいものではなく、イコール、アメリカンドリームと称される文化もある。 NPBも、推定ではなく正確な年俸を明らかにしてもいいものだと考えるが、そこには日本独特の奥ゆかしさを重んじる文化や、社会性、NPBの制度の違いがあるようだ。 元千葉ロッテの里崎智也氏は、現役時代、記者の質問に、「上がったとも言えませんし、下がったとも言えません。ただ100億円には至っていません(笑)」と答えていたという。 「そもそも、なぜ年俸を明らかにしないといけないのか?と逆に聞きたい。球団から言うなと、言われてきたわけではないが、年俸を明らかにすることのメリットは選手に何もない。選手が口にせずとも、誰がいくらもらっているかは、だいたいばれるもの。年俸を発表しなければならない理由がわからない」 元阪神、ダイエー(ソフトバンク)、ヤクルトの3球団でプレーした池田親興氏も、現役時代に年俸を言わなかった口で、「サラリーマンの人が、他人にいくらもらっていると言いますか? まず君の給料を教えてくれ。それなら君だけに言う」と答えていたという。