財務省の「財政再建ゲーム」が「黒字化できない」と話題に 意図を聞いた
財務省が作った、日本の財政を再建するシミュレーションゲームが話題を呼んでいる。ウェブ上でプレイヤーが財務大臣になって予算編成を行い、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指す内容だ。「なかなか黒字化できない」「財務省の結論ありきではないか」という声も出ているが、ゲームを制作した意図は何だったのか。財務省に聞いた。
黒字化できないとゲームオーバー
ゲーム「財務大臣になって日本の財政改革を進めよう」は、2005年に財務省が作ったウェブサイト「日本の財政を考える」のコンテンツのひとつ。プレーヤーは財務大臣になり、実際の財務状況に基づきプライマリーバランス(借金による収入や返済の支出を除いた、国の歳入と歳出の差)を黒字化させる予算編成を行う。プライマリーバランスを2020年までに黒字化することが、今の政府の財政健全化目標だ。
ゲームを始めると、2016年度の予算編成をもとにした財政状況が示される。プライマリーバランスが赤字の状態から始まり、右上に大きく「目標達成まであと5.7兆円」と表示されている。試しに公共事業を30%、1.79兆円削減した。町の住民から「通勤が大変」という声が漏れているが気にしない。同じく、国際経済協力予算も30%減、食料安定供給予算も30%減にした。「日本の国際的地位が下がる」「日本のおいしい米が食べられなくなる」という不満が出たが気にしない。 大改革をしたつもりだったが、3.3兆円の赤字が残り「将来の世代に負担を残す結果に」という言葉とともにゲームオーバーとなった。何回か試してみると、「社会保障」予算か「地方交付税交付金」を削減するか、税金を増額しなければ、黒字化が極めて難しいことが分かった。
「プライマリーバランスの黒字化に興味を持って」
「日本の財政を考える」のサイトと「財政再建ゲーム」を制作した財務省主計局調査課に、制作の意図を聞いた。同課の担当者は「財政に興味を持ってもらう広報の一環として制作した」と話す。このサイトには、「財政再建ゲーム」を遊んでいた25歳の男性が突然財務大臣に任命されたというドラマ仕立ての23分間の動画「大臣になった男」や、当時の財務省主計局調査課長が、日本の財政についてプレゼンする46分間の動画もある。 財務省は、中高生に対する出張授業や地方の財務局で、これらの動画やゲームを活用しながら財政についての広報を展開しているという。同担当者は「2020年までに、プライマリーバランスを黒字化するという目標について、興味関心を持っていただきたい」と制作意図を語る。制作は11年前になるが、ゲームのデータは毎年、予算や財務状況に合わせて更新されているという。