「男女格差」日本は世界“118位”やはり不名誉? “クセ強”も指摘される「ジェンダーギャップ指数」の本質的な見方とは
「ジェンダー不平等指数」の欠点
一方、2023年に『ジェンダー格差-実証経済学は何を語るか』(中公新書)を著した経済学者の牧野百恵博士(アジア経済研究所)は、ジェンダー不平等指数の問題を以下のように指摘する。 まず、この指数には「妊産婦死亡率」と「10代の出産率」が指標として含まれている。しかし、これらの指標は貧困や衛生状態に影響されるために、途上国では男女格差以外の要因で数値が低くなりがちだ。 また、日本はアメリカやイギリス、フランスやニュージーランドより順位が高くなっている。しかし、計算式に当てはめれば、これは「10代の出産率」の一点のみに起因することが分かる。この指標だけで「日本は他の先進国よりも男女格差が小さい」と断定するのには無理がある。 さらに、ジェンダー不平等指数は、経済分野での男女格差を「労働参加率の男女比」のみで測るため、パートタイム労働とフルタイム労働の区別も付けられない。男性がフルタイムで働いている一方で大多数の女性がパートタイムでしか働けない社会も「男女平等」とされてしまうのだ。 そして、教育については「中等教育(日本の場合は高校)就学率の男女比」のみを扱っており、「高等教育就学率の男女比」は扱っていない。日本は先進国中で唯一、女性の四年生大学進学率が男性を下回っている国だが、この事実がジェンダー不平等指数には全く反映されていないのである。
ジェンダーギャップ指数は「先進国間の比較」には有用
そもそも、日本は先進国である以上、比較する対象は発展途上国ではなく他の先進国にするべきだ。 そして、先進国間の比較に限定するなら、『ジェンダー不平等指数』よりも『ジェンダーギャップ指数』が適切だという。 『ジェンダーギャップ指数』の「経済」の分野には、労働参加率のほかにも「管理職の男女比」や「専門職の男女比」、「同一労働に対する賃金の男女格差」、「推定労働所得の男女比」などの指標が含まれているため、経済に関した男女格差を包括的に反映することができる。 また、『ジェンダー不平等指数』は政治領域の男女格差を「国会議員の男女比」のみで測るが、ジェンダーギャップ指数にはこれに「閣僚の男女比」と「過去50年間における行政府の首長の在職年数」が加わるため、より正確に男女格差を判断することが可能だ。 日本は男女間の賃金格差が激しく、管理職に女性が占める割合は低い。女性議員の割合は16%(2023年)で、現内閣の閣僚19人のうち女性は5人、そして女性の総理大臣を輩出したことはない。 やはり、ジェンダーギャップ指数は「経済」と「政治」の分野での男女格差を比較的正しく反映した指標と言えるだろう。