NISAのお悩み相談! S&P500型投資信託の積立が円高進行で含み損に…日本株型に買い替えるべきか人気FPがアドバイス
新NISAが始まってからもうすぐ1年が経つ。とはいえ、NISAで何を買うか、どう買うかについては、まだ手探りな人も多いだろう。NISA2年目を控えたこのタイミングは、投資先などを見直すチャンスだ。 【画像】相談者の資産内訳。海外資産の割合を徐々に増やそう! この記事では、読者から寄せられたNISAにおける悩みについて、人気のファイナンシャルプランナー・深野康彦さん(ファイナンシャルリサーチ)がアドバイス。人気のS&P500に連動する投資信託が値下がりして買い替えを検討している読者や、新興国株型投資信託の為替ヘッジありで損している読者の悩みに答えてもらった。 ※「オルカン」は三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の略称として商標登録されているが、ここでは全世界株のインデックス型投資信託の総称として使っている。 ●【お悩み1】円高転換で米国株ブーム終了? 「S&P500の積立で含み損…日本株型がよいの? 」(35歳・女性) 【深野さんの回答】円高を上回るリターン が見込める! むしろ円の比率の高さがリスク ! ■70円まで円高が進んでも 過去の実績から心配無用! 相談者は、ブームに乗って開始したS&P500の積立が、円高の影響で評価額がマイナスに。投資を始めて早々にマイナスを経験されたのですから、その原因となった円高リスクを必要以上に懸念されるのも無理はありません。 しかし、気にしても仕方ありません。まず、積立は長期が基本。1年未満の「途中経過」を見て一喜一憂するのは時間軸がずれていると言えます。 また為替はプロでも正確な予測が不可能です。実際、夏頃までは1ドル160円台で「円安で物価が上昇して苦しい」とか「為替介入しても円安が止まらない」などと円安危機が叫ばれていました。 それが一転して、140円台まで円高が進み「輸出企業の業績が悪化する」とか「円高で日本株が下がる」などと懸念されています。ですから、為替を予測しようとしないでください。最適な買いのタイミングは誰にもわかりません。 先人の知恵でもある、積立で時間を分散して買うことで為替リスクを低下させるのが、個人投資家には最適な方法といえます。 次に3年後、仮に現状より2割円高、1ドル115円まで円高が進行したとします。でもS&P500が3割上昇していればトータルでプラスです。S&P500の過去10年の平均リターンは約13%なので、その程度の上昇は期待できます。 もっと長期、10年後なら円が現在の2倍の1ドル70円になっていたとしても、過去の実績からみるとS&P500の成績が上回ります。 ■ITやAIの最強企業が揃った 米国の成長を取込む 日本株型の積立を検討しているとのことですが、日本は人口減少で国力が低下するリスクを抱えています。 まだ30代の若い相談者にとっては、むしろ、ITやAIで群を抜く最強企業が集結する米国の成長を取込まないリスク、円資産しか持たないリスクこそ心配すべきリスクではないでしょうか。 ですから、円高に振れて含み損が発生したからといって、せっかく始めたS&P500型投資信託とオルカンの積立を日本株型投資信託に変えるのはオススメできません。 国内で働いていれば相談者は今後も日本円で給与や年金をもらいます。放っておくと資産に占める日本円の比率が高まるばかりで、リスク分散になりません。現状の毎月一定額を海外資産に振り向けるS&P500の積立は正しい買い方です。ぜひ長期で続けてください。 ●【お悩み2】円高リスクは回避しない方がいい? 「新興国株型投資信託の為替ヘッジありで損してます」(40歳・男性) 【深野さんの回答】目的が海外の成長を取込むことなら 通貨分散の効果を消すヘッジは不要! ■日米の金利差が開き ヘッジのコストも高騰! 相談者が旧NISAで買った新興国株型投資信託の「為替ヘッジあり」は、為替リスクを回避しつつ新興国株式の高成長を取込むことを目指したものです。相談者もあえて為替ヘッジありを選んだのは、「高リターンは狙いたいが、リスクは小さく」を目指したのではないでしょうか。 しかし、その結果、近年の円安の恩恵を得ることができませんでした。逆に組入れ比率が高い中国株の低迷の影響で、中長期の運用成績がマイナスとなっているのでしょう。 相談者はまだ40代で、海外資産に積極的に投資して資産を大きく増やしたいと考えています。日本の人口減少や災害リスクを考慮すると海外へ分散投資するのは正しい戦略です。 ですが、為替ヘッジありにしてしまうと通貨を分散させる意味が消えてしまいます。 加えて為替ヘッジのコストも無視できません。この投資信託のように米ドル建てでヘッジを行う場合、為替ヘッジのコストはドルと円の短期金利の差で決まります。承知のとおり日本がようやくマイナス金利を脱した程度の低金利な一方で、米国は利下げに向かうとはいえ高金利。ヘッジコストは高止まりしており、「為替ヘッジあり」投資信託の運用成績の足を引っ張っています。 ■人口減少で国力低下し 円安の可能性も高い! 為替リスクは積立など買いタイミングを分散して買うことで低減させればOK。為替ヘッジなしのタイプを買うのがオススメです。 特に株式で運用するタイプの投資信託の場合、為替の変動よりも株価の変動の方が振れ幅が大きいので、なおさら為替ヘッジは不要だったといえます。新NISAで「為替ヘッジなし」の投資信託に買い替えるのも手です。 一方で、NISAつみたて投資枠ではS&P500連動型投資信託の積立を開始されています。こちらは為替ヘッジがないため、8月以降の円高で成績がマイナスとなって不安になっているとのこと。 ですが、心配無用です。上の「お悩み1」でも解説した通り、積立を継続してください。 10年後に円高で1ドル100円になっていたとしても、過去の実績からS&P500の上昇率が為替による損失を打ち消すほど好成績で、成績はプラスになっている可能性の方が高いです。 逆に日本の国力がさらに低下して今よりも円安になっている可能性は高いと思いませんか。そうなった際は、為替差益も加わり大幅なプラスを期待できます。 ※「ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2024」とは? 月刊マネー誌『ダイヤモンド・ザイ』では毎年、良い投資信託を表彰。第2回となる今回は、“新NISAで買える”好成績のアクティブ型投信30本を表彰した。本グランプリの特徴は、「5年以上の運用成績があり、みんなが買っている分野・投信に限定し、1.どれだけ上がったか(成績)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの基準で選定している点。完全な実力主義で評価し、「個人投資家にとって本当にイイ投資信託」かという点にこだわっている。特別枠として5年未満の好成績投資信託を厳選し、フレッシャー賞を設けている。 ※本記事は「ダイヤモンド・ザイ」2024年12月号から一部抜粋・再構成したものです。
ダイヤモンド・ザイ編集部
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