豪華キャスト陣が彩るフルコース…最も存在感を放った俳優は? 映画『グランメゾン・パリ』キャストの魅力を深堀り考察レビュー
飲食業界に蔓延るアジア人差別
メインの肉料理だと私が感じたのは、食を通した差別を浮き彫りにしていること。飲食業界=ミシュラン三つ星レストランの界隈では、アジア人に対する差別がいまだにあるということを映画では描いている。見ながら一瞬、悔しくなった。そしてそこを超えるのだと、尾花は言う。 「料理には国境がないってこと証明してやろうぜ」 素人ながらに思うけれど日本食は伝統の味を担保することがステイタス。寿司もすき焼きも天ぷらもさほど味は変わらない。でもそういう贅沢も美味だ。対するようにフレンチは味も見た目も日進月歩。ミシュランの調査員はあからさまな差別をしているのではなく、単に濃淡のないアジア料理に飽き飽きしていたのかも…とも思った。 そんなアジア人のパティシエ・リック・ユアン役として、オク・テギョン(2PM)が出演している。映画の予告を観ている際(やけに演技とガタイに迫力がある人がいるけれど?)と気になっていたけれど、今をときめくアイドルとは思わなかった。何かと問題を起こす役であるが、映画にとって良きスパイス。そして端正な顔立ちはフルコースのスイーツでしょうか。
観終わったあとの食事までが『グランメゾン・パリ』
とにかく約2時間があっという間に感じるほど、東宝の王道物語に没入した。メモをとりながら観ていたが、スクリーンに夢中になりすぎてノートを膝から落としてしまったほどだ。そして当たり前と言われそうだけど、映画の鑑賞後、『グランメゾン・パリ』のフルコースの映像に食指が動き、思い切りお腹が空いていたのでビストロに寄って、ガッツリと洋食を食べた。まさに風が吹けば桶屋が儲かるとはこのことで、食事までが映画『グランメゾン・パリ』。肉を頬張りながら、ふと映画公開前日のスペシャルドラマの冒頭、作品からのメッセージがあったことを思い出した。 「苦しいコロナ禍を戦い抜いた すべての飲食業界関係者の皆様にエールを込めて」 ああ、そうか。私が食した一皿は、エールなのだ。 【著者プロフィール:小林久乃】 出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。
小林久乃