豪華キャスト陣が彩るフルコース…最も存在感を放った俳優は? 映画『グランメゾン・パリ』キャストの魅力を深堀り考察レビュー
木村拓哉主演の映画『グランメゾン・パリ』が公開中だ。ドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)のメンバーが再集結し、世界最高峰と称されるフランス料理の本場・パリでミシュランの三つ星を目指す。今回は、いわば極上のフルコースといえる本作のレビューをお届けする。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
豪華食材=俳優陣が織りなす極上のフルコース
映画『グランメゾン・パリ』は監督という肩書きも持つ、塚原あゆ子シェフによる118分間のフルコースが楽しめる。 物語の舞台はフレンチの本場・パリ。巨匠と言われるシェフたちが、ミシュラン三つ星レストランを目指してライバル店に打ち勝つため、凌ぎを削る日々だ。東京で三つ星を獲得した『グランメゾン東京』のシェフ・尾花夏樹(木村拓哉)、早見倫子(鈴木京香)、相沢瓶人(及川光博)、京野隆太郎(沢村一樹)らは、『グランメゾン・パリ』を開き、異国の地で奮闘している。ただ数年前のように結果は出ることはなく、周囲からも見放され、尾花の強い言動によって厨房内も分裂。レストランが存続危機に陥ってしまう。 塚原シェフの前に並べられた(失礼ながら)豪華食材=俳優陣。劇中で尾花は質の良い食材を手に入れることに奮闘していたが、映画の食材は2019年に放送された『グランメゾン東京』(TBS系)と同じメンバーが揃う。今の日本の俳優界において熟成され、贅を尽くした顔ぶれだ。
ビジネスにおける協調性
フレンチフルコースについて私が詳しいわけではないので、あくまでイメージであると読み進めてほしい。 まずは前菜のイメージ。映画を見て気になったのは厨房で日本語、英語、フランス語、韓国語を俳優陣がきれいに操っていること。ふだんであれば聞き苦しさも生じるのかもしれないが、それがまったく感じられなかったのはお見事。 三つ星を目指すクルーの一員、相沢は劇中でサラダを作っていた。それが多種の野菜を一緒くたにするような斬新なレシピ。ただどれもが邪魔も喧嘩もせず、味を完成されていた一皿。 続けて魚料理。ドラマ『グランメゾン東京』でも見られた、ビジネスストーリーにおける”協調性”の重み。天才と呼ばれた尾花はパリでも一匹狼であり、気がめちゃくちゃ強い。市場で業者から良い素材も分けてもらえず、スタッフたちとも距離感が広がっていく。 「チャレンジで逃げるから三つ星に手が届かねえんだよ!」 そんな尾花がいくつもの困難と挫折を機にして傲慢さにやっと気づき、自省をする。そして新人のスタッフ・小暮佑(正門良規/Aぇ! Group)にこう聞く。 「俺に足りないものは何?」 一般的にも年齢を重ねていくと、嫌味を言う人間はいても指摘をしてくれる人間は格段に減る。自分の視界だけでは到底見えない世界を持った、若手に頭を下げるのは本気だからできるのだと、尾花から悟る。そして三つ星を目指すコースをチームで作る際、尾花は「任せる、おまえに」をひたすら繰り返す。これだ。敏腕だと言われる経営者は自分以外の人間を信用して、任せるというスタンスを持っている。ビジネスコンテンツにおいて、すべて自分がチェックしている経営者が、業績を順調に伸ばしたという例は聞いたことがない。 自分以外の誰かがいないと、一皿は成立しないのである。食材、調理、サーブ、プロモーション。これらが一体となって、初めて完成するのだ。この協調性がコースでいう魚料理だろうか。