プライベートレンダーが銀行撤退した「空白地帯」へ、化石燃料取引拡大
(ブルームバーグ): プライベートクレジット運用会社が手掛ける化石燃料関連の取引は、数年前に比べ大幅に増加している。気候変動リスクが大き過ぎると懸念する銀行が撤退した「空白地帯」に進出している。
オルタナティブ投資業界を調査する分析会社プレキンのデータによると、石油・ガス業界のプライベートクレジットの取引額は、2023年までの2年間で90億米ドル(約1兆3700億円)を超え、それ以前の2年間の4億5000万米ドルを上回った。金額は、公表された取引またはプレキンに直接開示された限られた取引に基づく。
この数字は、規制や風評への懸念から化石燃料を除外する方針を銀行が打ち出したことを受け、石油やガス、石炭関連の資産の一部が透明性の低い市場に移りつつあることを明確に示す。投資家によると、トレンドは今後数年でさらに強まる見込みだという。
SAFグループのライアン・ダンフィールド最高経営責任者(CEO)は、石炭や石油、さらには天然ガスに関わるローン市場から撤退する銀行も出てくるとみる。同社はカナダのエネルギーセクターでは最大手のオルタナティブレンダーの一社だ。
この変化は、気候関連の規制が他の地域よりも厳しい欧州に拠点を置く銀行で特に顕著だ。BNPパリバやINGグループなどが化石燃料関連の融資への制約を強めている。ダンフィールド氏によれば、ESG(環境・社会・企業統治)方針が見劣りし、多様性にも乏しい中堅企業が、最も強くこのトレンドを実感している。
ダンフィールド氏によると、SAFの自国市場であるカナダで石油・ガス関連のファイナンスに取り組んでいた欧州の複数の銀行が「過去5年間で手を引いた」という。米国の銀行が一部撤退したことも相まって、資金調達に関してギャップが生じているとの見方を示す。
銀行からプライベートクレジットに移行する企業にとり、そのコストはかなりの額になる可能性がある。
シドニー拠点のホワイトヘイブン・コールが最近11億米ドル規模の融資を確保しようとしたところ、計17のプライベートクレジットレンダーが集まったのに対し、銀行は1行のみで、いわゆる担保付翌日物調達金利(SOFR)に対し650ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上乗せの支払いとなった。ブルームバーグ・ニュースが先月報じた。