ウェブメディアで氾濫する「変な広告」の正体…なぜ記事を読みたいのに動画を視聴させられるのか「このままだと、ヤバい」
なぜかメディアの使い勝手が日に日に悪くなっている
ゲームにしろ、ニュース記事にしろ、無料といっても無料ではない。制作に原価はかかっていて、読者の代わりに誰かがお金を払っている。ウェブメディアではその役割は広告主が果たしている。問題はウェブメディアにおいて、その「代わりの誰か」が、だんだん少なくなってきていることだ。 広告に回る全体の金額を見ると増えているのだが、ニュースメディアに回るお金は減ってきている。それが評判の悪いリワード広告の召喚につながった。 しかし、動画広告を見ないと記事を読めない不便なウェブメディアが、私たちメディア人が求めた未来だったのだろうか。インターネットの登場で情報の民主化が進んだはずが、本当にそうなっているのだろうか。 テクノロジーは日々進歩しているはずだ。ありとあらゆるものがスマホに集約され、生成AIの登場で更なる業務効率化が期待される。世の中はこれからも、どんどん便利になっていくはずだ。それなのに、なぜかメディアに関しては使い勝手が日に日に悪くなっている。一体なぜなのだろう。
ウェブメディアに流れていたお金が動画、検索、SNSへ
実をいうと2021年以降、多くのメディアはPVの下降傾向に悩まされてきた。コロナ禍での巣ごもり需要により各メディアは最高PVの更新に沸いたが、オリンピックも終わり、人々が待ち望んだ「ニューノーマル」の時代が訪れると、かつての最高水準に達することができなくなってしまった。 巣ごもり需要の低迷に加え、動画サイトやSNSにユーザーを奪われ、ウェブメディアの数そのものが増えるなど、複合的な要因があった。 一方で、広告の動きにも変化があった。2023年4Q(第四四半期)のグーグルの決算を見ると、売上高は過去最高であるものの、多くのウェブメディアが収益源の柱としている「グーグル・ネットワーク」(アドネットワーク広告)が昨対比97・9%で減少している。昨々年対比だと89・2%にまで落ち込んでいる。 電通らが発表した「2023年 日本の広告費」によれば、マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は前年比106・9%の1294億円とパイそのものは広がった。だが、新聞デジタルは94・1%の208億円、媒体数は増加しているとされる雑誌デジタルは100・2%の611億円と厳しい。 デジタル広告の種類別に見ていこう。ウェブサイトの広告枠に表示される「運用型ディスプレイ広告」の金額は昨対比7・6%増の6939億円だった。だが担当者によると、「運用型ディスプレイ広告の増加要因にSNSは大きく影響」したそうだ。 つまり、SNSのタイムラインなどでコンテンツに挟まれる形で表示されるタイプの「インフィード広告」が活況ということであり、多くのウェブメディアの収益を支えてきたネットワーク広告は「苦戦している」という。 他方、検索連動型広告は9・9%増、動画広告は15・9%増と順調に伸びている。ソーシャル広告単体でみても13・3%増で順調だ。結局、これまでウェブメディアのネットワーク広告枠に使われていたお金が検索、動画、SNSに流れていると分析できる。