ウェブメディアで氾濫する「変な広告」の正体…なぜ記事を読みたいのに動画を視聴させられるのか「このままだと、ヤバい」
新聞や雑誌が部数が落ち込んでいる中、活路として目されたウェブメディア。しかしそのウェブメディアも厳しい状況にたたされている。かつてはネットワーク広告を使って効率的に稼げる媒体ではあったが、ここ数年で広告単価が激減している。一体何が起こっているのか。 【画像】最近のウェブ、広告で読みにくくないですか? 資産形成メディア「MINKABU」編集長、鈴木聖也氏が解説する(本稿は鈴木聖也著『最近のウェブ、広告で読みにくくないですか?』(星海社)から抜粋、再構成したものです)
最近、ネットで「変な広告」増えていませんか?
「最近、オンライン記事の広告が異様に増えていませんか」 そんなことを聞かれたことがある。たしかに、ここ最近増えている気がする。 『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』『週刊ポスト』などの雑誌を母体とした、いわゆる雑誌系ウェブメディアの広告によくあるパターンはこんなものだ――まず読みたい記事のタイトルをクリックすると記事本文の最初の100文字だけ表示され、その下に「続きを読む」ボタンが出てくる。 本文が始まる前段階のはずなのに、その時点ですでに「フッター広告」(画面下部に固定され、スクロールしても消えない広告)に加え、「続きを読む」ボタンの下にディスプレイ広告が表示されている。 本文を読み始めると500字程度ですぐにまた広告が出現する。そして記事を読んでいると1000字程度で記事のページが区切られ、続きを読むためには「次のページへ」を押さなくてはいけない。次のページを開くと、さっきとはまた違う広告が表示される。 日本のウェブメディアだと常識のようになっているかもしれないが、こういった一つの記事を分割して表示することは「ページネーション」と呼ばれ、度重なる広告表示と併せて読む人に大きなストレスを与えている。なぜこのような読みにくい構成になっているのだろうか? 答えは広告をたくさん表示させるためとされる。
タワマン批判記事に表示されるタワマンの広告
1つの記事を1ページにまとめるよりも、ページネーションを使って複数ページに分けて読者に何回もページを読み込ませた方が、さまざまな広告が表示されるため、結果として広告がクリックされる可能性が高まると言われているのだ。 また、ウェブ広告にも種類がある。多くの無料ウェブメディアでは、自社の営業部などが広告を出したい企業から直接獲得してきた純広告のほか、ネットワーク広告というものが記事を埋め尽くしている。 ネットワーク広告とは、簡単にいうとそのウェブメディアの運営者ではなく広告代理店がウェブ広告を出稿したい企業をまとめ、提携しているウェブメディアに対して一斉に配信している広告だ。 サードパーティークッキーとよばれる、ブラウザーにユーザーの行動情報などを保管する仕組みを使って、読者にとって最適な広告をその都度配信している。 1本の記事で複数回、違った広告を表示させることによって、「広告の最適度合いを高めている」と主張する編集者もいる。 仮に東京・湾岸地区の高層マンション、いわゆる「タワマン」に関する広告があるとしよう。タワマンについて書かれた記事はウェブで氾濫しているので、そういった記事のページにタワマン広告が出る。あなたもこれまでにどこかで見かけたことがあるはずだ。 しかし、タワマン記事は批判的な論調のものも少なくない。タワマンを批判している記事なのに、その記事のネットワーク広告として表示される広告が新築タワマンの販売をお知らせするものであったら、記事と相反する内容の広告なのでおそらくクリックしないのではないだろうか。 しかし「次のページへ」をクリックして、今度は「タワマン批判の急先鋒作家のセミナー」の広告が出現したら、思わず広告をクリックしてしまうかもしれない。これが「広告の最適度合いを高める」ということだ。