マランツ、ミドルクラスのHDMI搭載プリメイン「MODEL 60n」。上位モデルの高音質化技術を多数継承
マランツは、HDMI ARCでテレビにも接続できるネットワーク対応プリメインアンプの新モデル「MODEL 60n」を9月下旬より発売する。カラーはシルバーゴールド、ブラックの2色展開で、価格は242,000円(税込)。 「MODEL 40nのコンセプトをそのままに、より多くの方にMarantzサウンドを」提供すると謳う ネットワークオーディオ再生機能を搭載しつつ、ARC対応のHDMI端子も装備することで、テレビなどとも接続して使用できるプリメインアンプ。2022年3月に発売された、同じくHDMI ARC対応のプリメインアンプの上位モデル「MODEL 40n」の技術を数多く受け継いでおり、同社曰く「MODEL 40nのコンセプトをそのままに、より多くの方にMarantzサウンドを提供する」べく開発したモデルだという。一方で、プリアンプおよびパワーアンプの回路には近作モデルからの技術を盛り込んだり、ハイレゾ音源再生においてDSD 11.2MHzに対応するなど、最新の再生環境に合わせたアップデートもなされている。 筐体には、MODEL 40nを踏襲した “新世代マランツを象徴する筐体デザイン” を採用。デザインの刷新に伴って機構の見直しも行っており、ダブルレイヤードシャーシの採用のほかボトムプレートを追加し、プリメインアンプの既存モデル「PM7000N」と比べて質量が約2.2kg増加、剛性を高めているという。そのほか、リブ入り高密度インシュレーターの採用、トップカバーやシャーシを構成する鋼板の形状や各部を固定するネジの太さや本数の最適化が行われている。 HDMI端子はARCに対応し、192kHz/24bitまでのリニアPCM(2ch)の入力が可能。HDMIケーブルを通して伝送されるオーディオ信号を、HDMIインターフェースデバイスを介することなく、直接デジタルオーディオセレクター(DIR)に入力するという、音声信号ショートシグナルパスを採用することで高音質化を図っている。さらに、デジタルオーディオ回路の電源強化や低ノイズ化、グラウンドの強化など、徹底した音質チューニングが施されている。 HDMIコントロール機能(CEC)にも対応しており、HDMI接続したテレビと電源オン/オフを連動させたり、テレビのリモコンで本機の音量を調整したりすることも可能だ。 MODEL 40n同様、一般的に使用される音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行わず、パワーアンプのみで増幅する可変ゲイン型を採用。ノイズレベルを大幅に改善するとともに、機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差、空間表現力を向上させることができるという。 ボリューム部には、チャンネル間のクロストークとギャングエラーを最小化するため、可聴帯域外に至るまで優れた特性を備えるというボリュームコントロールICを採用。このボリュームコントロールICに高速アンプモジュール「HDAM」と「HDAM-SA2」を組み合わせてリニアコントロールボリューム回路を構成している。 MODEL 40nと異なる点として、本機のHDAM回路には、同社プリメインアンプ「MODEL 50」と同様の、BJTカスコードと高精度ウィルソン型カレントミラーアクティブロードを追加。これによって動作電流の高精度化と低歪化を図った。 そのほか、ゼロクロス検出によるゲイン切り替えによりボリューム操作時のクリックノイズ発生を排除。加速度検出システムにより、ゆっくり回すと小さなステップで高精度に、速く回すと素早く音量を調節することできる。可変抵抗体を使用しておらず、ボリュームパーツの経年劣化に伴う音質の変化もなく、長期にわたり安心して使うことがでると説明している。 パワーアンプには、ハイスピードでS/Nが高く、低歪率だという「HDAM-SA3」を用いたフルディスクリート構成の電流帰還型増幅回路を採用。ここでもMODEL 50と同様に、フィードバックタイプのカレントソースと、ウィルソン型カレントミラー回路を採用することにより歪率を大幅に改善したとしている。既存モデルPM7000Nと比較すると、1kHzにおける歪率が67%減少しているとのこと。 また、肉厚なアルミ押し出し材ヒートシンクを搭載しており、これによってトランジスタから発生する熱を素早く拡散・放熱することで、動作安定性を高めている。また温度上昇の抑制のみならず、電源回路が発するノイズがオーディオ回路に干渉することを防ぐシールドとしても機能するという。 電源回路には、クリーンな電流を安定的に供給し、かつ瞬間的な大電流の要求にも耐えられるようシールドケース付きの大容量トロイダルトランスを搭載。漏洩磁束を抑えるため、垂直方向の磁束漏れを抑えるアルミ製ショートリングに、水平方向の磁束漏れを抑える珪素鋼板シールドを加えた2重シールドを施している。また、平滑回路には本機用に開発されたカスタムブロックコンデンサー(15,000μF/63V)を採用し、大容量と高速な電源供給能力を両立させているという。 瞬時電流供給能力を向上させるためにパワーアンプ用電源回路と出力段を一体化したショート・パワーライン・レイアウトも、MODEL 40nおよびMODEL 50から引き続いて採用。大電流ラインを最短距離で結び、左右チャンネルを対称に配置することにより、瞬発力と優れた空間表現力の両立を狙った。 MMカートリッジ対応のフォノイコライザーを搭載。J-FET入力を採用することでS/Nの向上と低歪化を実現すると同時に、入力カップリングコンデンサーを無くして信号の純度を高めた。また、電源ラインにリップルフィルターを追加することでさらにクリーンな電源供給が可能になったとしている。 このほか高音質化技術として、プリアンプ回路やD/A変換回路、フォノイコライザー回路には、上位モデルでも採用されているカスタム・フィルムコンデンサーや高音質フィルムコンデンサー、マイカコンデンサー、精密メルフ抵抗など、リスニングテストによって厳選された高音質パーツを使用する。 スピーカー出力には、同社オリジナルのスピーカーターミナル「SPKT-1+」を装備。コア部は真鍮の無垢材から削り出された堅牢なもので、リスニングテストの結果を踏まえ、表面処理は従来のニッケル下地/金メッキの2層ではなく、厚みのある1層のニッケルメッキを採用した。直径4.5mmまでのケーブルに対応するほか、Yラグ、バナナプラグにも対応。入出力端子には金メッキ処理を施すことで経年劣化を防止しているとのこと。 ネットワーク・モジュールを含むデジタルオーディオ基板、D/A変換回路をシールドケースに収めることで相互干渉および外来ノイズの影響を排除。また、電源回路とオーディオ回路とで物理的な距離を取り、その間にシールドとして機能するヒートシンクを配置することによって、電源回路から発生するノイズおよび漏洩磁束によるオーディオ信号への影響を遮断しているとのこと。 さらに、基板やシャーシを固定するビスやワッシャーの種類を使用する箇所に応じて変更することでグラウンドインピーダンスを最適化するなど、これまでに同社が積み重ねてきたさまざまな高音質化技術が盛り込まれている。 アナログ音声信号に影響を与える周辺回路からのノイズを抑えるため、ネットワークおよびUSBメモリー再生、Wi-Fi、Bluetooth回路をそれぞれ個別にオフにする機能、およびディスプレイを消灯する機能を搭載。ディスプレイには、フルドット式の有機ELディスプレイを採用。斜め方向から見てもコントラストが低下することなく、高い視認性を維持するという。また、操作を行った際に表示を一時的に大きくするなどといった工夫がなされている。 独自のワイヤレスオーディオのプラットフォーム「HEOS」を搭載。音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオ、ローカルネットワーク上のミュージックサーバー(NAS / PC / Macなど)やUSBメモリー、スマートフォンやタブレット、Bluetooth機器など、多彩な音源を再生可能。さらに同一のネットワーク内にある他のHEOSデバイスに、本機で再生中の音楽を配信することもできる。 そのほか、Amazon Music HDをはじめ、AWA、Spotify、SoundCloudなど様々な音楽ストリーミングサービスのほか、MP3、WMA、AACフォーマットで配信されているインターネットラジオ放送にも対応。「TuneIn」からジャンルや地域、言語などをもとにラジオ局の検索が可能だ。 Wi-Fiは、2.4GHzと5GHzの両方が利用可能で、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)にも対応。ルーターへの接続はボタンひとつでつながる「WPS」や、iOSデバイス(iOS 7以降)からの設定の共有にも対応している。 PCやネットワークHDDなどのローカルネットワーク上のミュージックサーバーや、USBメモリーに保存したDSDファイルやハイレゾ音源の再生に対応。DSDファイルは最大11.2MHzまで、PCMは最大192kHz/24bitまで再生することができる。さらに、DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生にも対応する。 音声入力端子には、HDMIやUSBのほか、アンバランス×3、フォノ(MM)×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1を装備。出力端子には、2.1chプリアウトとヘッドホン端子を備える。 定格出力は80W+80W(4Ω)、60W+60W(8Ω)。周波数特性は5Hz - 100kHz(±3dB)、全高調波歪率は0.02%(20Hz - 20kHz/両チャンネル同時駆動/8Ω負荷)、ダンピングファクターは100以上(20Hz - 20kHz/8Ω負荷)。外形寸法は442W×120H×431Dmm(ロッドアンテナを倒した状態)で、質量が13.0kg。付属品にはリモコンやスタートガイド、Bluetooth/Wi-Fiアンテナなどが同梱する。
編集部:岡本雄