阪神ドラフト2位・椎葉剛 “虎の次世代守護神候補”が1年で球速を11キロアップできた理由 一度は野球を諦めかけた男が徳島で得た「圧倒的なパワー」<徳島インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー①>
2023年は、のちのち「ドラフト会議が変わった年」と言われるかもしれない――。そんな感想を抱いてしまうほど、今年の独立リーグの躍進は目を見張るものがあった。じつに23人が指名を受けたのだ。これは社会人野球出身者の13人を超える数字だった。 なかでも四国アイランドリーグplusに所属する徳島インディゴソックスは驚異的な結果を出した。支配下3名、育成3名、計6名もの選手がドラフト指名を受けたのである。一回ドラフトにおける史上最多の指名人数となる。 これは偶然ではない。徳島インディゴソックスは11年連続26人をNPBに送り出しているのだ。徳島でいったい何が起きているのだろうか? 今年指名を受けた6人全員に話を聞くことで、インディゴソックスの育成力の秘密に迫った。 *********************************** 【動画】椎葉の投球フォーム 6名の中で最初に話を聞いたのは、阪神から2位に指名された椎葉 剛投手(島原中央-ミキハウス)だ。インディゴソックスの過去の記録(3位)を塗り替える、最高順位での指名だった。 椎葉の特長は、MAX159キロのストレート。今年のドラフト指名選手の中でも最速だ。この圧倒的なストレートを武器にリーグでは22試合に登板、39イニングを投げ51奪三振、防御率は2.31を記録した。 椎葉がインディゴソックスに在籍したのはたった1年。この短いあいだに何が起きていたのだろうか?
社会人時代は裏方がメイン「公式戦の登板は1回ほど」
「いまも『オレはプロ野球選手や!』みたいな感じはないんですよね。イベントなどに出させていただいて、ちょっとずつ『本当になったんだなあ』って思うようになってきています」 椎葉がそう話すのも無理はない。たった1年前、彼は野球を続けられるかどうかの瀬戸際にいたのだから。 「(社会人野球の)ミキハウスで3年間やらせていただいたんですが、公式戦の登板数が1試合とか。だいたいカメラマンなどの裏方をやっていました。ほとんど野球はできなかった。練習はちょっとはしていたんですけど……。『野球いつやめようかな』とは考えていました。そうしたら昨年、3年目のシーズンが終わったときに、クビを切られてしまったんです」 野球を諦めてもまったくおかしくない状況だったが、椎葉の気持ちは徐々に変化した。 「クビになったときは、『もう野球無理だなあ』なんて思ったんですけど……。数日経ったときに、『僕には野球しかない、野球を続けたい』って思いが強くなりました。僕は野球しかしてこなかったし、まったく勉強もできなかったですし、悔しい気持ちもありましたから。クビをきられたままで終わるのはダサいですしね。『野球で見返すしかない、1年で見返してやる。1年で絶対にプロに行ってやる』っていう気持ちが強くなったんです」 そして椎葉は徳島インディゴソックス入団を決める。 「ミキハウスの先輩が2人、インディゴソックスでプレーしていました。2人ともドラフト候補といわれるぐらいまで成長したんですよね。結果NPBには行けなかったんですけど、ミキハウスの時からそんな話は聞いていて、自分も成長できるんじゃないか、思って決断しました」 ちなみに、インディゴソックスについてそれ以上のことは知らなかった。 「独立リーグっていうのも正直知ったのも2年ぐらい前なんです。正直あんまり詳しくなくて……。徳島が(入団するまで)10年連続でNPB選手を出してるってことも正直知らなくて、入団するときに知りました(笑)」