年末年始、高齢の親を持つ子世代が行っておきたいこと~『親不孝介護』の著者に聞く・前篇~
年の瀬を迎え、まもなく新しい年、2025年がやってくる。 来たる2025年は、団塊の世代や1950年代に生まれた人々が一斉に後期高齢者となり、医療費や介護費などの社会保障費が急増することや、人手不足が懸念されることから「2025年問題」とも言われてきた。……そう、2025年には、日本人の5人に一人が後期高齢者となるのだ! 【画像】年末年始、高齢の親を持つ子世代が行っておきたいこと~『親不孝介護』の著者に聞く・前篇~ この連載でテーマとしている認知症に関していえば、厚生労働省が今春発表した資料によると、「認知症患者と、認知症の前段階とされる経度認知障害(MCI)を合わせた割合」が、2025年には65歳以上人口のおよそ3割弱になる(「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(九州大学)より)。 そんな中、『親不孝介護』(日経BP)というセンセーショナルな題名の本に出合った。本によると、「親の介護は突然やってくるもの」で、「介護が始まる前に知っておくべきことがある」という。 そこで今回は、『親不孝介護』の著者お二方に、「親の介護が始まる前に準備しておくといいこと」や、「年末年始、時間があるときに行っておくといいこと」、逆に「行わないほうがいいこと」などについて伺う。
「親不孝介護」とは?
2022年に刊行された『親不孝介護』は、東京で妻や子供たちと暮らしながら、実家・新潟で一人暮らしをする母親の遠距離介護に挑んだ編集Yこと、当時50代の編集者・山中浩之さんの5年間の実録である。 センセーショナルな題名ではあるが、意図するところは、介護される親も介護する子世代も、さらには公的サービスを提供する業者や行政にとっても、「よりメリットとなる」のは一般的に親孝行とされる概念に基づく行動ではなくて、むしろ親不孝と思われる選択ではないかというものだ。 「介護するために親と同居したり、仕事を辞めたり、休んだりすることが親孝行と考えられがちですが、それでは介護をする側もされる側も疲弊してしまい、結果的に親孝行から遠のいてしまうことになりかねません。早いうちからプロに委ねる意識を持ち、外部の手を借りるルートを持っておくことがいかに大切かを私自身の体験としても、強く実感したのです」(山中さん) 山中さんは、80代で一人暮らしをする母親のことをいつも心のどこかで気にしながらも、親の老化を正視したくない思いなどから、介護に入る前は1年に1度程度しか母親に会わないでいた。なお、山中さんは一人っ子だ。 しかし、仕事で介護体験記を編集したときに、「親の状態に注意して、まずいと思ったら1日でも早く介護の準備を始めるのが大事だ」と知り(知ったという以上に、読者に伝える立場となり)、「自分のところはどうなのか」と気になって思い切って帰省したところ、母親がいろいろと「怪しい状態にある」と知る。そこで、本の編集で知り合った「NPO法人 となりのかいご」代表の川内潤さんに相談しながら、遠距離で母親の介護に取り組み始めた。 『親不孝介護』には、その記録が細やかに記述されている。それだけでなく、ブリヂストンや電通などで出版当時2000件余り(注:2024年12月現在は3600件)の介護相談を担当してきた川内さんが、プロの立場から山中さんの折々に生じる疑問に答えたり、より幅広い情報を提供してくれたりしているため、読者は読むだけでリアルな介護を追体験しつつ、有益な情報を得ることができる。