三島賞大田さん「信じる気持ちよみがえった」山本賞青崎さん「青春小説として評価うれしい」
選考会では「とにかく面白いが、書き割り的なキャラクターが出ている部分もあり、これを文学賞にしていいのか」と委員から異論が出たという。選考委員の小川哲氏は「命を懸けるようなゲームを青春小説の枠組みに落とし込んでいて、短いやりとりの中で高校生同士の感情のぶつけ合いが端的に描かれている」と解説。「戦っている人間同士の内面描写を緻密に書けるのは、漫画や映像作品では実現できない小説というメディアの強みだ」と小説の優位性を強調した。
青崎さんは受賞決定後の会見で「ゲームを扱った小説で殺人事件が起きたりはしないので、本格ミステリーとして読んでもらえるか不安があった」と吐露。「ギャンブル漫画を青春小説のフォーマットでやってみようと思い、3人の女子高校生の関係性の物語に集約させた。青春小説として評価していただいたのもうれしい」と笑顔で話した。
「ミステリーと言ってもいろいろあるが、自分が一番魅力を感じるのはロジック、謎解きの部分。米の推理作家、エラリー・クイーンの作風に感銘を受けた」という青崎さん。漫画的な手法を取り入れたことへの批判を念頭に、「もし『地雷グリコ』がライトノベルのレーベルから発表されていたら、同じ内容でもこんなふうに評価していただけただろうか。小説家としてというより、一人のエンターテインメント好きとして考えていかなければいけない部分もある」と問題提起した。(村嶋和樹)