中国の「一帯一路」構想はもはやオワコンか…その「驚きの実態」が見えてきた
「デジタルシルクロード構想」
すでに中国は一帯一路に関連し「デジタルシルクロード構想」も提唱しており、この地域での中国のデジタル製品・サービスの輸出を促進し、同時に5Gをはじめとする次世代デジタル技術における国際標準化の主導権を確保することを目指しています。 ただし一部ではすでに当初の戦略的プロジェクトが中止となった箇所もあり、また融資の規模が当初に比べて縮小するなど、すべてが中国の思うようにうまく進んでいるわけではありません。 また、2022年2月末から始まったロシアによるウクライナ侵攻が、この一帯一路構想に及ぼす影響にも目を向ける必要があるでしょう。ロシア・ウクライナともにこの一帯一路構想の沿線国となり、両国とも中国と東欧・欧州を結ぶライン上に鉄道や道路などのポイントを持っていました。 また構想にはポーランドをはじめとする中東欧の国々も入っていましたが、ロシアがウクライナ侵攻に及び、中国が「中立からロシア寄り」のポジションを取ると、ウクライナはもちろん、中東欧諸国の対中姿勢も見直すように変わらざるを得なくなります。 とは言え、宇露戦争の前からすでに中国が2020年に「内循環を主流にした双循環」宣言を出してから、外向き投資が軒並み低減していて、中東欧諸国が期待していたよりもはるかに投資が少なく、気持ちが中国からすっかり離れていたというリアルな背景は理解しておく必要があるでしょう。
「どうせ中国は失敗するだろう」では足元を掬われる
このように、参加国が多いこと、カバーしている面積が大きいことから変数も増えてしまうのが巨大構想の難しさなのですが、実際のところ、一帯一路構想の「現状」はどのようなものなのでしょうか。 2023年には「一帯一路」サミットが開催されましたが、日本国内のメディアでは、「反中論」を繰り返しがちな論客系の人ではなく、対中スタンスがニュートラルなコメンテーターと呼ばれる方々でさえ、「G7唯一の参画国であるイタリアでさえ抜けることが既定路線になっている一帯一路は、すでに失敗した外交フレームである」と解説していました。 しかしこうした見方は、「どうせ中国は失敗するだろう」という思い込みに基づくもので、正しい対中認識とは言えません。もちろん、「一帯一路は終わった外交フレームではない」という指摘は、直ちに「一帯一路は成功する」という主張と一致するものではありません。万事うまくいくとも言えないが、オワコンでもないのです。