富士登山の8合目 北米で一番“天国に近い”ゴルフ場に響いた「マツヤーマー!」
マイルハイシティと呼ばれる海抜1600m(1マイル)のデンバーよりも夏場は10℃以上気温が低い日もある。日照時間が長いため8月は午後6時までティタイムが用意されているが、山の冬は長い。営業期間は例年、雪がない5月半ばから半年ほどしかない。 午後4時過ぎ、心地よい風に誘われコースを散策していると、3人組の男性がスタートしていった。パー3の2番ホール。ひげの長いおじいさんが8m近いパットを沈めた。高々とガッツポーズをしながら発したのは、まさかの「マツヤーマー!」の声…。
背中越しで目を丸くしていたこちらが日本人だと知るや、「マツヤマ(松山英樹)は先週の試合(フェデックスセントジュード選手権)でパットを決めまくっていただろう。今週(BMW選手権)は棄権したな。腰痛だって? あと、ワシの好きな選手はトミー・ナカジマ(中嶋常幸)だ」なんて言うではないか…。 捏造すら疑われかねない、原稿におあつらえ向きなこのおじいさん、聞けばコースのクラブチャンピオンに4回輝いたというゲーティン・マルティネスさん。御年61歳にして、ぶんぶん振り回す1Wの飛距離は250ydを誇る。「“このコースなら”な! 隣のパー4では300ydをワンオンしたこともあるぞ」。ゴルフの「飛ぶ」は、いつまでも人を元気にするらしい。
高くした目線の向こう、見渡す限りの大パノラマの中に万年雪を抱いたひと際大きな山があった。陽の光を集めた雨雲が白く輝きながらゆっくり動いている。コースの名にもなったマッシブ山(マウントマッシブ)の標高は4398m(1万4428フィート)だという。かなり登ってきたつもりでいたけれど、ずーっと高い山はいくつもあるんだなあ。(コロラド州リードビル/桂川洋一)
桂川洋一