不動産ファンド「ケネディクス」元社長が、バブル崩壊直後に「52棟のワケあり物件」を売り抜いた秘策
東京から行ってもらった片山慶三が営業所長となり、売主マッセの隊長だった花岡さんや若手の坂本君にも来てもらった。昨日までの売主が今日からは買主のアセットマネジメント業務を手伝うという面白い構図。でも、物件のことを一番よく知っているのは彼らだ。 それとデューデリジェンスを速攻でやってくれたアセット・ワン(ケネディクス関連会社)大阪支店の上薗有一郎君にも来てもらった。彼は物件売却のチーフだ。52棟はすべて彼の差配で売却していくことになる。こうして大阪営業所が始動した半年後、いよいよ物件売却が始まった。 本当に違法物件が売れるのか、不安だったが、そこは商習慣の違う大阪だった。四国の銀行の大阪支店とか、地元の地域密着型の信金、信組が物件を買いたい人(個人投資家や余資運用したい会社)に寄り添ってしっかりと融資をしてくれた。 ● 反社会勢力のテナントを 入居させて売却を妨害 いろいろな属性の買主とも知り合えて、それはそれで非常に面白かった。 記憶している限り買主は大阪が中心だが、大阪以西の、兵庫、島根、福岡などの買主、個人投資家も多くいた。神戸の資産家の親子は、母親と息子で物件を取り合っていたのが面白かった。この親子だけで10棟以上買ってくれた。
不良債権物件は環境の急変(主として金融環境の悪化)のために所有者が経営に行き詰まって売る、あるいは債権者に「売らされる」ものなので、えてして売買妨害が入りやすい。 例えば銀行が10億円融資しているが、今やその担保物件は3億円の価値しかない。銀行は7億円損するのをわかっている。しかし、今売らせて3億円だけでも回収しないとさらに価値が落ちたら大変だ。 一方、売主としては売っても1円も残らず、3億円全額銀行に持っていかれるのはわかっている。どうせ売るのなら多少でも実入りが欲しい。だからあの手この手で売却を妨害してくる。 例えば反社会勢力のテナントをわざと入居させておく。いざ買主が現れた時にこう言う。「物件を買いたくても、このテナントがいると買えないでしょう?いくらか払ってくれれば私が退去させますよ」みたいな手を平気で使ってくる。 売主は債権者である銀行に「売却コストとしてテナントの立ち退き費用が1000万円かかるので銀行の回収額は2.9億円になる。それでもよければ売却に同意します」と説明する。