「新卒の給与だけUP」「新人バイトの時給の方が高い」…理不尽な“賃金の逆転現象”はなぜ起こる?
新卒初任給額の大幅な引き上げや33年ぶりの高水準でのベア(ベースアップ)の妥結(春季労使交渉)といった明るい話題が広がる一方、実際のところ既存社員の給与はあまり上がっていないのではという話も聞きます。 社内で賃金額がどのように決まるのか、また正社員とアルバイトでは賃金の決まり方がどう違うのかについても解説します。
◆初任給引き上げとベースアップの関係
まず初任給の引き上げとベースアップの関係を整理しておきましょう。初任給とは文字通り新卒者の給与のことです。初任給は一般に労働市場の需給によって決まります。 少子高齢化や景気の拡大などで人手不足になり労働市場が売り手市場に変わると、採用競争力を維持するために初任給を引き上げざるを得ません。 一方、物価が上昇することで賃金の実質価値が目減りするような状況になると、賃金のベースを引き上げて実質的な価値を維持することが求められます。これがベースアップです。 初任給の引き上げが先か、ベースアップが先かは状況によりますが、初任給が引き上げられると既存社員の賃金とのバランスが崩れるので、既存社員の賃金の底上げ(ベースアップ)がまず行われるのが一般的です。 なおベースアップといっても全従業員の賃金が同じ増加率で増額されるわけではありません。ベースアップという場合、まず全従業員の賃金総額全体の増加額(増加率5%など)が決まります。 その後で、その増加額を人事戦略や採用戦略を踏まえてどう分配するかを考えますが、多くの企業では、比較的賃金が高額な中高年への分配を抑えて若手や新卒者に厚く分配しています。 そのため新卒者を中心とした若手社員は給与が増加した実感を抱きやすい一方、中高年社員はあまり上がっていない(据え置き)という感覚を持ちやすいです。 このようにベースアップと初任給の引き上げは社内での賃金バランスの維持や、賃金増加額の分配という仕組みの中で連動しているのです。