売り上げ100万円でも粗利は10万円程度...。円安に影響される人々の給与を調査!
■本国から課される目標に対し、円安が大きな障壁に ・外資系ヘルスケア企業 法規制対応(男/40代後半) 〈年収〉【額面】2000万円〈冬のボーナス額〉200万円(前年比→ 年1回春支給)〈ベアは?〉なし 部下ふたりのマネジメントと現場仕事が主な業務で、立場上、部署の成果の責任を負わなければならない。外資系企業はどこも管理職になると業務量が爆増しがちで、月80時間の残業が常態化している。 ボーナスは業績や個人のパフォーマンスに連動して算出されるが、為替を織り込まずに目標が設定される。そのため、インフレなんかよりも円安がキツイ。米国本社をベースにすれば、円安により業績が目減りするのは当たり前。たとえ国内で昨年比の業績が数%成長しても、米国本社から見れば通貨安がマイナス30%近いため、日本の業績は減っていることになる。おかげで年々、目標を達成する見込みが厳しくなっていて、インセンティブにもつながらない。ボーナスが満額支給されることは当分ないと思われる。 また、中国やインドの成長に伴い、日本への投資が渋られるようになっていることも実感する。会社への不満は今のところないので、こうした円安によって人員が削減されたりして、次第に負担が増えていく現状は残念でならない。 ちなみに、飲み会などはほとんどなし。上級職になるほど時間的な余裕がなくなるのと、ハラスメントのリスクが面倒なので、事業部長クラスは同じ階級の人たちだけで飲んでいる。 ■インフレに対応した福利厚生には満足 ・製菓材料商社 営業事務(女/30代後半) 〈年収〉【額面】400万円〈冬のボーナス額〉56万円(前年比↑)〈ベアは?〉なし 営業事務、主に外出中の営業のサポートを担当。ホテル、ケーキ店、レストラン、工場、専門学校からの注文や問い合わせに対応し、見積書作成や企画書依頼などを行なっている。 ホテルとのやりとりはスムーズだが、年配夫婦が営む洋菓子店などからはいまだにファクスで注文が入るので煩わしい。ペーパーレス化がいっこうに進まないことには絶望するが、好きでやっている仕事なので辞めたいとは思わない。ただ、会社の体質が古く、産休・育休など女性のための制度がまったく整備されていないのはどうかと思う。 ベアはなかったが、その分福利厚生がアップグレードされた。具体的には、毎年会社から贈られる誕生日ケーキはかつて上限3000円だったのだが、2020年に3500円に上がり、今年2月には5000円になった。ケーキも年々値上がりしていたのでありがたい。 業績は好調で、昨年過去最高の売り上げをマーク。もともと不景気に強い業界で、円安に伴ってインバウンド需要が回復したのも良かった。 ただ、売り上げはあるのにスタッフが確保できずに閉店する得意先が多いのがこの業界の難点。スタッフを雇わずに運営できる小さな規模で再スタートする店舗も散見された。労働力不足はかなり深刻だ。 ■原油高や円安で、市場全体が低迷中 ・酒類商社 経営企画(女/20代後半) 〈年収〉【額面】550万円〈冬のボーナス額〉75万円(前年比→)〈ベアは?〉なし もともとは営業担当だったが、現在は役員とふたりだけの部署で経営企画を担っている。例えば、会社の経営方針と現状とのギャップを埋めるために、どの価格帯の商品を売り伸ばしていくのか、データを基に経営陣に提案するような仕事が多い。 飲み会の類いが非常に多いのはこの業種ではやむなし。さすがに会社全体の飲み会はコロナ禍でなくなったが、チーム単位では頻繁に飲んでいる。嫌なときは断りやすいのでストレスはない。 もともと第一志望の会社で、初任給は悪くなかったが、昇給ペースが極めて遅いのが不満。正直、社内の人間関係にも飽きてきたので、そろそろ転職を検討し始めている。 とりあえず副業に精を出そうと、資格取得のために予備校に通う傍ら、他業種のSNS運用をバイトでやっている。時給制や月給制ではなく、宣伝したい案件ひとつにつき3万円もらうスタイル。通勤中にこなせるので割が良く感じるし、何より楽しいのでもう少し続けたい。 ちなみに、アルコール市場の規模は全体として低迷中。ノンアル市場が広がっていて、そこに進出する企業が増えているが、活気を取り戻すには至らない。ワインなどの輸入物は原油高や円安による打撃が大きい。 取材/井澤 梓 奥窪優木 友清 哲 西田哲郎 橋本愛喜 東田俊介 室越龍之介 文/友清 哲 イラスト/服部元信