典型的な“アジアの戦い”となったミャンマー戦。上田綺世のヘッド弾に至るまでの布石や流れには見るべきものがあった
選手の意図を一連のプレーから読み取くと...
[W杯アジア2次予選]日本 5-0 ミャンマー/11月16日/パナソニックスタジアム吹田 【動画】南野の“送り届ける”ラストパスから上田がヘッド弾 引いた相手をどう崩すかという、本当にアジアの戦いを地で行くような試合展開で、日本は24本のシュートを記録して5得点。通常であれば、早い時間に1点取れれば相手も攻撃的にならざるを得ないが、ミャンマーは5-4-1のシステムと守備的な姿勢を崩さずに戦い続けたこともあり、大量得点で勝利するのは難しかったことは間違いない。 それでも5つのゴールを含めて、ボールを回しながら一瞬の隙やギャップを生み出し、そこを突いて行くという意識の共有とクオリティの部分は前向きに評価できる。 たとえばハットトリックを達成した上田綺世の1点目はヘディングシュートによるものだが、そこに至るまでの布石や流れという意味でも、見るべきものがあった。 右サイドで堂安律が起点となり、そこから鎌田大地が中央にカットインして、パスを受けた南野拓実がボックス内に浮き球のボールを入れる。そこに上手く動き出した上田が合わせるという形だが、選手の意図を一連のプレーから読み取りながら解説したい。 まずは5バックの相手を崩すための布石として、ワイドのトライアングルがある。このシーンでは右サイドバックの毎熊晟矢が堂安の内側から上がって深みを作り、その右外側でボールを持った堂安から斜めのバックパスを鎌田が受け取り、その間に中央の田中碧が縦に受ける動きをすることで、1トップのエイン・テッ・アウンを引きつけて、鎌田がカットインするコースを作った。 鎌田にはウェ・リン・アウンが付こうとするが、お構いなしにスピードに乗ると、左手前に引いていた南野が鎌田からボールを受けた。この時、上田はディフェンスラインの手前にいて、左サイドで幅を取る相馬勇紀より少し低い位置だったが、南野が受ける瞬間に、ミャンマーのディフェンス陣が揃ってボールウォッチャーになる状況を逃さなかった。 南野は「ああいうブロックで固められるとなかなか細かいパスは難しい。チップのボールは、綺世が動き出しを得意としているし、それが見えたので、そこに出せて良かった」と振り返るが、出し手と受け手のイメージが一致して生まれた形だろう。 5バックのリベロ的なポジションにいたチョウ・ミン・ウーは鎌田がカットインする流れで、上田に対する縦パスを警戒して前に出ていたが、南野にボールが出たところで、最終ラインに戻る。 南野は少しタメを作って、上田が裏を狙う動きに合わせて浮き球のボールを送った。浮き球と言っても、放り込むというよりは送り届けるようなボールであり、最終的に付いてきた右センターバックのテッ・エイン・ソーは競り合いにも行けなかった。 非常に高い打点のシュートで、そこだけ切り取ると強引に見えるが、崩しのイメージとしては美しい流れから生まれたゴールだ。 上田は「スペースがないなかでも、背後の動きでわずかなスペースを作る。自分が受けるのもそうだけど、それを継続的にやる意識を持っていた。ど真ん中だったけど、良い形でボールをもらえた。あれはボールが良かった」と語る。