【スルメイカ、資源崩壊の危機!】神頼みしてもイカが獲れないワケ、中国や北朝鮮漁船の獲りすぎなのか?
6月に解禁となった北海道南部のスルメイカ漁の初水揚げが函館で6月5日の朝にありました。11隻が出漁して3隻がゼロ、前年の6分の1のたった200キロでした。“記録的不漁”といった言葉が、漁業ではスルメイカだけではなく、資源管理制度の不備で枕詞のように毎年繰り返されるようになってしまっています。 【図表】イカ類・漁獲量推移 スルメイカは鮮魚出荷だけでなく、スルメなどさまざまな加工品になります。地元にとって、そして全国の消費者にとってとても重要な水産物です。年によっては、どこそこでイカが豊漁などというニュースがたまにありますが、全体ではどういう傾向になっているのでしょうか?
底を打ってしまいそうな漁獲量
下のグラフはイカ類の漁獲量推移を表しています。スルメイカだけでなく、イカ類として漁獲量が激減しているのが一目瞭然です。点ではなく、全体像で見るとこれが現実なのです。 ちなみに、スルメイカの不漁は日本だけのことではありません。同じイカ資源を韓国も漁獲していますが、日本同様に不漁で、イカ釣り漁業者が減船事業に参加して撤退するケースが増えているそうです(韓国北東部で60隻の内3割が該当)。 また、近年は聞かなくなりましたが、2013年~19年ころにかけて年間で50~200隻を超える北朝鮮の木造船が漂着することが話題になりました。また中国船の日本の排他的経済水域(EEZ)内での操業も問題になりました。しかしながら、漁獲量の減少に伴い話題にならなくなってきています。
イカの資源量はどうなっているのか?
スルメイカの漁獲量が激減してしまったのは、明らかにイカ漁業に関わった国々による獲り過ぎです。資源が減ったために漁獲量が激減しているのです。このため中国や北朝鮮の漁船が減ったことで漁獲量が回復していないことからもわかるかと思います。すでにかなり漁獲量は減少していますが、さらに2024年4月まで過去15カ月も連続で、前年の漁獲量を下回っているという惨状です。 ちなみに資源減少の理由としてレギュラーのように出てくる「海水温上昇」ですが、水産白書(H29 年)によると以下のように書いてあります。『我が国周辺水域では、水温が温かい時代である温暖レジームにはカタクチイワシや スルメイカ等の漁獲量が増え』 現在は、海水温上昇が問題になっているので、スルメイカは増えるはずですが、その逆の激減です。こういった矛盾した発表は、海水温低下と上昇が原因と矛盾した2つの指摘があるイカナゴの減少理由をはじめ、誰に指摘されないのでいくつも放置されています。 スルメイカでは、資源量と環境の関係で矛盾点が露出しています。まず海水温は少しずつ100年で平均約0.6度(気象庁)高くなっています。ところでスルメイカの場合、資源が減少している原因として考えられるのが寒冷レジーム、つまり水温の低下となっています。 さらに産卵期に海水温が低下したことが原因ともいわれています。ところで、水温が高いのではなく低いというのがそもそも疑問です。しかも、一方でこれだけ温暖化が問題になっているのに、それが逆に生態に影響するほど低かったとは考えにくいです。 ちなみにこんな報告もあります。『2019年9月24日、盛岡で、水産庁と「するめいか資源に係る意見交換会」が行われた。研究者の話もまじえ、昨年暮れから今年初めにかけて、東シナ海の水温分布は、するめいかの産卵に良い環境であった、と報告されている』 岩手の漁業者の方が、スルメイカ資源の環境要因に関する矛盾を新聞社に指摘しているブログがこちらです。良く調べないで、責任転嫁された内容がそのまま報道されていることがわかります。これでは誤解が誤解を生んでいくだけです。 また、もしもそれだけ水温が低かったのであれば、スルメイカは産卵のための適水温を求めて移動するはずですね。スルメイカの産卵海域は図の通り広範囲にわたっています。高温ならともかく、海水温の低下が資源減少の主因になるとは、にわかには信じがたいです。 仮説になりますが、こういう矛盾が起こってしまう理由は、魚が減った結果を、獲り過ぎに目を背けて、環境要因に転嫁してしまうためと考えます。例えていうなら、周りの企業はみな業績が良いのに(世界全体では水揚量は増加中)、悪かった(日本だけが減少傾向)ことを、景気悪化(海水温上昇など)に転嫁して反省しないのに似ています。