藤田菜七子元騎手の事件は、厩舎人とみられる通信相手側の調査をJRAが結果で示すべきだ【競馬】
◇記者コラム「ターフビジョン」 藤田菜七子元騎手が突然引退したことは残念だ。自ら決めたのであれば仕方のないことではある。ただ、客観的事実としては、迫られて引退に追い込まれたわけでもない。 引退したため、今回の件に関する裁定委員会は開かれない。一部週刊誌などで「競馬関与停止の可能性」などと騒がれたが、全く的外れだろう。開かれていたとして「即引退」となるほどの制裁が決定していたかどうかははなはだ疑わしい。 昨年、若手騎手6人が騎乗停止に処された事件の騎乗停止期間は30日。事件の後、全騎手対象の調査で彼女が供述した調書に虚偽があった点がどう判断されるかという論点は残るが、行った違反そのものの質は、当時の6人と大差ない。違反の時期も昨年の事件以前であって、その後に発覚した、偽装工作の認められた案件とは雲泥の差だろう。 棚上げしてはいけないのは、問題となった通信の相手が厩舎人とみられることだ。調整ルームという公正確保システムは、世間一般の常識からはやや厳し過ぎるかに映るかもしれないとしても、厩舎人にとっては常識であってしかるべきだ。 騎手と厩舎の間に業務連絡の必要が生じることは確かにあるが、多少面倒だとしても、ルーム管理者の監視下であれば、連絡の取れる仕組みがある。JRAは相手側の行動も看過せず調査し、結果で示すべきだ。 (若原隆宏)
中日スポーツ